86回薬剤師国家試験問15 メタンチオール,メタノール,メチルアミンの沸点の比較
第86回薬剤師国家試験 問15
次の沸点に関する記述の正誤を判定してみよう。
a 硫黄(イオウ)原子は酸素原子より電気陰性度が大きいため、メタンチオール(メチルメルカプタン)はメタノールより沸点が高い。
b o−ニトロフェノールは分子内水素結合を作り、p−ニトロフェノールは分子間水素結合による会合を作るため、p−ニトロフェノールの方が沸点が高い。
c 酸素原子の電気陰性度が窒素原子より大きいことは、メタノールの沸点をメチルアミンより高くしている要因の1つである。
d ジメチルエーテルはメタノールより分子量が大きいため、ジメチルエーテルはメタノールより沸点が高い。
第86回薬剤師国家試験 問15 解答解説
a × 硫黄(イオウ)原子は酸素原子より電気陰性度が大きいため、メタンチオール(メチルメルカプタン)はメタノールより沸点が高い。
→ ○ 硫黄(イオウ)原子は酸素原子より電気陰性度が小さいため、メタンチオール(メチルメルカプタン)はメタノールより沸点が低い。
硫黄原子は酸素原子より電気陰性度が低い。
そのため、−SH基(チオール基、メルカプト基)のHは−OH基のHよりも正の分極度合が小さく、
−SH基が形成する水素結合は−OH基が形成する水素結合よりも弱くなる。
よって、官能基が−SHのメタンチオール(メチルメルカプタン)は官能基が−OHのメタノールより沸点が低い。
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水素結合(理系ラボさん)
◆ bについて
b ○ o−ニトロフェノールは分子内水素結合を作り、p−ニトロフェノールは分子間水素結合による会合を作るため、p−ニトロフェノールの方が沸点が高い。
o−ニトロフェノールは分子内のOHとNO2が近いことから、これらが分子内で水素結合を作るため、分子間の水素結合を形成しにくくなる。
一方、p−ニトロフェノールでは、分子内のOHとNO2は離れていることから、分子内水素結合を形成しない。
よって、p−ニトロフェノールはo−ニトロフェノールよりも分子間水素結合を形成しやすいため、融点・沸点は高い。
◆ cについて
c ○ 酸素原子の電気陰性度が窒素原子より大きいことは、メタノールの沸点をメチルアミンより高くしている要因の1つである。
酸素原子は窒素原子より電気陰性度が大きいため、
−OH基のHの方が−NH2基のHよりも正に分極する度合が強いため、−OH基の方が−NH2基よりも強い水素結合を形成する。
よって、メタノールの沸点はメチルアミンより高い。
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水素結合(理系ラボさん)
◆ dについて
d × ジメチルエーテルはメタノールより分子量が大きいため、ジメチルエーテルはメタノールより沸点が高い。
メタノールには−OH基があるため、メタノール分子同士で−OH…:Oの水素結合を形成する。
一方、CH3OCH3(ジメチルエーテル)は、ジメチルエーテル分子同士で水素結合を形成しない。
メタノールはジメチルエーテルより分子量は小さいが、
メタノール分子同士で水素結合を形成するため、
ジメチルエーテルより沸点が高い。