91回薬剤師国家試験問16 分散力と電子雲のゆらぎ,クーロン力,ファンデルワールス力のポテンシャルエネルギーの距離依存性
第91回薬剤師国家試験 問16
次の分子間力に関する記述の正誤を判定してみよう。
a 極性分子、無極性分子ともに、固有の永久双極子モーメントを有する。
b 無極性分子間に働く分散力は、分子内電子雲のゆらぎにより生じる。
c ファンデルワールス力のポテンシャルエネルギーは、分子間距離rに反比例する。
d イオン間の静電ポテンシャルエネルギーは、イオン間距離rに反比例する。
第91回薬剤師国家試験 問16 解答解説
◆ aについて
a × 極性分子、無極性分子ともに、固有の永久双極子モーメントを有する。
→ 〇 極性分子は永久双極子モーメントを有するが、無極性分子は永久双極子モーメントを有さない。
◆ bについて
b 〇 無極性分子間に働く分散力は、分子内電子雲のゆらぎにより生じる。
無極性分子や極性が無いような炭化水素基においても、瞬間的には電子雲のゆらぎが生じ、位置によって+と−の電荷の偏りが生じている。ある無極性分子に瞬間的な電荷の偏りが生じると、それによって近くの無極性分子において電荷の偏りが誘起され、無極性分子間でも弱いながらファンデルワールス引力による相互作用が起こる。これを、瞬間双極子−誘起双極子相互作用といい、この時の引力を分散力またはロンドン力と呼ぶ。
なお、瞬間双極子−誘起双極子相互作用の元となる瞬間的な電子雲のゆらぎは無極性分子のみならず全ての分子で起こりうるので、分散力(ロンドン力)は無極性分子だけでなく全ての分子間に働く。
★参考外部サイトリンク
分散力(ロンドン力:誘起双極子-誘起双極子間相互作用)(薬学マンさん)
◆ cについて
c × ファンデルワールス力のポテンシャルエネルギーは、分子間距離rに反比例する。
ファンデルワールス引力のポテンシャルエネルギーは分子間距離rの6乗に反比例し、
ファンデルワールス反発力のポテンシャルエネルギーは分子間距離rの12乗に反比例する。
なお、ファンデルワールス相互作用として、
永久双極子−永久双極子相互作用,
永久双極子−誘起双極子相互作用,
瞬間双極子−誘起双極子相互作用(分散力)がある。
関連項目のリンク
・分散力のポテンシャルエネルギーと距離の関係 100回問91の3
◆ dについて
d 〇 イオン間の静電ポテンシャルエネルギーは、イオン間距離rに反比例する。
詳細は下記のリンク先を参照
静電的相互作用のポテンシャルエネルギーはイオン間距離に反比例 100回問91の2