ニトログリセリンがPVCチューブに吸着する時の分子間相互作用 108回薬剤師国家試験問201
108回薬剤師国家試験 問201
80歳女性。身長160cm、体重50kg。胸の痛み及び息苦しさの訴えにより救急搬送された。急性心不全の診断にてニトログリセリン注射液を投与することとなった。診療録には「ニトログリセリン注射液は(ア)0.05μg/kg/分より開始して様子をみていく」と記載されている。
なお、添付文書には、「0.05μg/kg/分の速度より開始して血圧等の循環動態をモニターしながら適宜増量し、最適点滴速度で維持する」とある。また、この注射液はポリブタジエン製輸液チューブ(PVC(注)フリー)の点滴ルートでシリンジポンプにより投与するものとする。
(注:ポリ塩化ビニル)
問201(物理・化学・生物)
ニトログリセリン注射液投与時にPVC製のチューブを使うと、ニトログリセリンがチューブに吸着し、静脈内への到達量が著しく減少することが知られている。この吸着に関連すると考えられる分子間相互作用はどれか。1つ選びなさい。
1 水素結合
2 電荷移動相互作用
3 静電的相互作用
4 分散力
5 イオン−双極子相互作用
108回薬剤師国家試験 問201 解答解説
ニトログリセリンのPVC(ポリ塩化ビニル)製チューブへの吸着に関与すると考えられる分子間相互作用は、4の分散力である。
ニトログリセリンとPVC(ポリ塩化ビニル)の構造は下記の通り。
分散力とは、ロンドン力とも呼ばれ、分子内電子雲の瞬間的なゆらぎが基で生じる、瞬間双極子−誘起双極子相互作用による引力である。
分散力は、無極性分子同士を含め、全ての物質の間にはたらく相互作用で、物質の分極率が大きいほど強くなる。
他の選択肢にある、水素結合,電荷移動相互作用,静電的相互作用(イオン結合),イオン−双極子相互作用は、
ニトログリセリンとポリ塩化ビニルの構造より、これらの分子間では働きにくいと考えられる。
関連問題
・分散力とは 105回問98の1
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108回問200,201(e-RECさん)