薬物の吸収に関する記述 100回薬剤師国家試験問166

100回薬剤師国家試験 問166
薬物の吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 口腔粘膜から吸収される薬物は、肝初回通過効果を回避できるが、小腸と比較して口腔の粘膜が非常に厚いため、速やかな吸収が期待できない。
2 肺からの薬物吸収は、一般に、T型肺胞上皮細胞を介した単純拡散によるものである。
3 皮膚の角質層の厚さには部位差があることから、薬物の経皮吸収も部位により大きく異なることがある。
4 鼻粘膜は、主に吸収を担う多列線毛上皮細胞が密に接着していることから、バリアー機能が高く、一般に薬物吸収は不良である。
5 坐剤の適用は、即効性は期待できるものの、経口投与時と同程度に肝初回通過効果を受ける。

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100回薬剤師国家試験 問166 解答解説

 

◆ 1について
1 × 口腔粘膜から吸収される薬物は、肝初回通過効果を回避できるが、小腸と比較して口腔の粘膜が非常に厚いため、速やかな吸収が期待できない。

 

口腔粘膜は、重層扁平上皮からなり、消化管よりも皮膚に近い構造を持っている。
口腔粘膜には、角質化している部位と角質化していない部位が存在する。一般に、咀嚼による機械的刺激にさらされやすい部位(歯肉など)は、角質化しており、薬物の透過性が低い。
一方、舌下粘膜や頬粘膜などの角質化していない部位は、薬物の透過性が高い。

 

口腔粘膜から吸収される薬物は、肝臓を経ずに直接全身循環に移行するため、肝初回通過効果を回避できる。

 

 

◆ 2について
2 ○ 肺からの薬物吸収は、一般に、T型肺胞上皮細胞を介した単純拡散によるものである。

 

肺からの薬物吸収は、一般に、単純拡散による。
一部の物質の経肺吸収は、担体介在輸送によると考えられている。
肺胞腔と毛細血管の間には、一部を除き、
扁平な一層のT型肺胞上皮細胞が存在しているだけであり、
上皮細胞の厚さは1μm以下である。
小腸上皮細胞の厚さは40μmであるので、
肺胞上皮細胞はきわめて薄く、水溶性薬物及び高分子化合物の透過性も比較的に高い。

 

 

◆ 3について
3 ○ 皮膚の角質層の厚さには部位差があることから、薬物の経皮吸収も部位により大きく異なることがある。

 

 

◆ 4について
4 × 鼻粘膜は、主に吸収を担う多列線毛上皮細胞が密に接着していることから、バリアー機能が高く、一般に薬物吸収は不良である。

 

鼻粘膜は、多列線毛上皮からなり、厚さは50〜70μmである。線毛の働きで、鼻粘液は鼻の奥へ流れる。鼻粘膜は細胞間で密着結合を形成しているが、バリアー機能は比較的に低く、薬物の分子量が1000以下であれば、透過可能であるので、薬物吸収は良い。

 

 

◆ 5について
5 × 坐剤の適用は、即効性は期待できるものの、経口投与時と同程度に肝初回通過効果を受ける。

 

坐剤により投与され、直腸中下部から吸収される薬物は、
門脈を通らずに全身循環静脈血に入る。
よって、坐剤の適用は、即効性が期待でき、肝初回通過効果を受けない。

 

関連問題
直腸上部から吸収される薬物の吸収 95回問174b

 

 

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