水酸化鉄(V)の溶解度積 110回薬剤師国家試験問3
110回薬剤師国家試験 問3
難溶性塩である水酸化鉄(V)(Fe(OH)3)の純水中での溶解度をS mol/Lとすると、
その溶解度積(Ksp)を正しく表しているのはどれか。1つ選びなさい。
1 3S3(mol/L)3
2 4S3(mol/L)3
3 9S3(mol/L)3
4 9S4(mol/L)4
5 27S4(mol/L)4
110回薬剤師国家試験 問3 解答解説
難溶性塩である水酸化鉄(V)(Fe(OH)3)の純水中での溶解度をS mol/Lとすると、
その溶解度積(Ksp)を正しく表しているのは、
選択肢5の27S4(mol/L)4である。
溶解度とは、一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量であるが、
溶質が難溶性塩の場合、飽和溶液の時の濃度で表される。
難溶性塩である水酸化鉄(V)(Fe(OH)3)の飽和溶液では、
下記の沈殿平衡(溶解平衡)が成立している。
Fe(OH)3(固体) ⇄ Fe(OH)3(溶解)
溶解したFe(OH)3は、下記のように完全に電離する。
Fe(OH)3(溶解) → Fe3+ + 3OH−
以上をまとめると、Fe(OH)3の沈殿平衡は、次のように記される。
Fe(OH)3(固体) ⇄ Fe3+ + 3OH−
上記の沈殿平衡の平衡定数Kについて次式が成り立つ。
上式において、[Fe(OH)3(固体)]を一定値とし、
次のように変形する。
K・[Fe(OH)3(固体)] = [Fe3+]・[OH−]3 = Ksp
KspをFe(OH)3の溶解度積という。
Ksp(溶解度積)は、一定温度で物質に固有の値である。
本問の飽和溶液は、共存イオンの影響等を考慮する必要のない、
純水を溶媒とするFe(OH)3の飽和溶液である。
この飽和溶液におけるFe(OH)3の溶解度をS(mol/L)とおくと、
溶液中の各イオン濃度(mol/L)は、下の図のように表せる。
以上より、本問の溶液におけるFe(OH)3の溶解度積(Ksp)と溶解度(S mol/L)の関係式は、以下のように表される。
Ksp = [Fe3+]・[OH−]3 より、
Ksp = S mol/L・(3S mol/L)3
Ksp = 27S4 (mol/L)4