塩基性アミノ酸のうちのヒスチジンの pHの変化に対する化学種の存在比(割合),荷電と等電点
本ページでは、塩基性アミノ酸のうちのヒスチジンにおけるpHの変化に対する解離,各化学種の存在比(割合)の変化,荷電状態,および等電点について説明しています。
pHを低い状態から上げていくことによるヒスチジンの酸解離の様子を述べる。
便宜的に各化学種をT〜W型と呼ぶことにする。
@ カルボキシ基の酸解離平衡
カルボキシ基の酸解離平衡のKa,pKaをKa1,pKa1と表す。
A 側鎖のイミダゾール基の酸解離平衡
側鎖のイミダゾール基の酸解離平衡のpKaをpKRまたはpKa3と表す。
L-ヒスチジンでは、αアミノ基よりも側鎖のイミダゾール基の方が塩基性が弱い。それは、αアミノ基の共役酸(NH+)よりも側鎖のイミダゾール基の共役酸(NH+)の方が酸性が強いことを意味する。
B αアミノ基の酸解離平衡
αアミノ基のKa,pKaをKa2,pKa2と表す。
〇 L-ヒスチジンの等電点について
ある物質について、主に電荷0の化学種として存在し、見かけ上電荷を持たなくなる時のpHを、その物質の等電点と呼ぶ。
塩基性アミノ酸のうちのL-ヒスチジンでは、カルボキシ基がCOO−で負電荷を帯び、かつ、αアミノ基がNH3+で正電荷を帯びている化学種は、分子内で電荷が±0である。
塩基性アミノ酸のうちのL-ヒスチジンでは、pHが(pKR+pKa2)/2の時、見かけ上電荷を持たなくなることから、L-ヒスチジンの等電点は(pKR+pKa2)/2であるといえる。
言い換えると、pHがL-ヒスチジンの等電点の(pKR+pKa2)/2に等しい時、L-ヒスチジンは見かけ上電荷を持たなくなる(電荷が±0になる)といえる。
以上のことに基づき、
下の図を参考に、点Fから出発して徐々にpHを上げていくことを想定し、溶液のpHの変化に対するヒスチジンの各化学種の存在割合の変化を考えてみる。
・点F
T型がほぼ100%を占める
・点A
点AのpH=pKa1
T型とU型が50%ずつ占める。
・点D
点DのpH=(pKa1+pKR)/2
U型がほぼ100%を占める。
・点B
点BのpH=pKR
U型とV型が50%ずつ占める。
・点E
点EのpH=(pKR+pKa2)/2
V型(電荷0の化学種)がほぼ100%を占める。
よって、点EのpHは等電点に該当する。
・点C
点CのpH=pKa2
V型とW型が50%ずつ占める。
・点C以上のpH
pHが上がるにつれてV型からW型に変わるものが増えていき、
いずれW型がほぼ100%を占める状況になると考えられる。