88回薬剤師国家試験問15 pKaと酸性,pKbと塩基性
第88回薬剤師国家試験 問15
解離定数に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。
a pKaの値が小さいほど、酸性の強さは小さい。
b pKbの値が大きいほど、塩基性の強さは大きい。
c pKaの値は、解離している分子種と解離していない分子種が等モル量存在している溶液のpHに等しい。
d 25℃における弱電解質水溶液では、pKa×pKb=14として取り扱える。
e pKb 8の塩基性薬物は、pH 9の水溶液においてはほとんどがイオン型で存在している。
第88回薬剤師国家試験 問15 解答解説
◆ aについて
a × pKaの値が小さいほど、酸性の強さは小さい。
→ 〇 pKaの値が小さいほど、酸性の強さは大きい。
詳細は下記のリンク先を参照
88回問15a
◆ bについて
b × pKbの値が大きいほど、塩基性の強さは大きい。
→ 〇 pKbの値が小さいほど、塩基性の強さは大きい。
詳細は下記のリンク先を参照
88回問15b
◆ cについて
c 〇 pKaの値は、解離している分子種と解離していない分子種が等モル量存在している溶液のpHに等しい。
上記の酸塩基平衡を基に、
弱酸性物質について、溶液のpH,HAのpKa,分子形濃度[HA],イオン形濃度[A−]の関係式として、
次のヘンダーソン・ハッセルバルヒの式が成り立つ。
これを変形すると、
(1)式より、弱酸性物質のあるpHにおけるHA(分子形)とA−(陰イオン形)の存在割合(存在比)を計算できる。
これより、pH=pKaの時、次のことが成り立つ。
分子形HAの濃度 = 陰イオン形A−の濃度
存在比 = 分子形HA:陰イオン形A− = 1:1
下図は1価の弱酸性物質における溶液のpHと分子形(HA)および陰イオン形(A−)の存在割合の関係を示す曲線である。
弱酸性物質におけるpHの変化に対する分子形・イオン形の分率・存在比の変化については、下記の別ページで詳しく解説している。
弱酸性物質におけるpHの変化に対する分子形・イオン形の存在比の変化の解説 へ
◆ dについて
d × 25℃における弱電解質水溶液では、pKa×pKb=14として取り扱える。
→ 〇 25℃における弱電解質水溶液では、pKa+pKb=14として取り扱える。
水の自己解離の平衡定数である水のイオン積(Kw)について、次式が成り立つ。
水のイオン積については下記のリンク先を参照
水のイオン積 82回問13b
次の@とAの弱酸性物質HAとその共役塩基A−の酸塩基平衡が成り立つ水溶液において、
HAのKa、および、
HAの共役塩基のA−のKbは次式で表される。
HAのKaと
HAの共役塩基のA−のKbを掛け合わせると次のようになる。
(HAのKa)×(A−のKb)=[H3O+]×[OH−]= Kw
(HAのKa) × (A−のKb) = Kw について、
両辺の負の常用対数をとると、
(HAのpKa) + (A−のpKb) = pKw となる。
以上のことは、
次のBとCの弱塩基性物質Bとその共役酸のBH+の酸塩基平衡が成り立つ水溶液においても同様に成り立つ。
(BH+のKa)×(BのKb)=[H3O+]×[OH−]= Kw
(BH+のpKa)+(BのpKb)= pKw
◆ eについて
e 〇 pKb8の塩基性薬物は、pH9の水溶液においてはほとんどがイオン型で存在している。
上記の塩基B:(分子形)と共役酸BH+(陽イオン形)の酸塩基平衡について、弱塩基性物質B:のヘンダーソン・ハッセルバルヒの式として次式が成り立つ。
(2)式に、pHとBH+のpKaを代入すれば、そのpHにおける分子形Bと陽イオン形BH+の存在割合(存在比)がわかる。
よって、pKb 8の塩基性薬物B:の共役酸BH+のpKaは次式より求まる。
(BH+のpKa) + (B:のpKb) = 14
(BH+のpKa) + 8 = 14
(BH+のpKa) = 6
したがって、pKb 8の塩基性薬物のpH 9の水溶液における分子形,イオン形の比率について次のことがいえる。
存在比= 分子形B:陽イオン形BH+ = 1:1000
ゆえに、pKb 8の塩基性薬物は、pH 9の水溶液において、ほとんどがイオン形で存在していると考えられる。
下図は溶液のpHと弱塩基性物質の分子形(B)および陽イオン形(BH+)の存在割合の関係を示す曲線である。
なお、弱塩基性物質におけるpHの変化に対する分子形・イオン形の分率・存在比の変化については、下記の別ページで解説している。
弱塩基性物質におけるpHの変化に対する分子形・イオン形の存在比(分率)の変化 へ
★参考外部サイトリンク
pHおよび解離定数(yakugaku labさん)