尿の着色と紫外可視吸収スペクトル 104回薬剤師国家試験問203

104回薬剤師国家試験 問203
73歳女性。体重48kg。高血圧の既往症があり、現在、オルメサルタン口腔内崩壊錠を服用している。
この女性は毎日、血圧を測定しており、その値は正常値の範囲内で安定している。
最近、咳が止まらず近医を受診したところ、肺非結核性抗酸菌症と診断された。
本人が以下の処方箋を持って来局した。

 

(処方1)
リファンピシンカプセル150mg  1回3カプセル(1日3カプセル)
1日1回 朝食前 28日分

 

(処方2)
エタンブトール塩酸塩錠250mg  1回2錠(1日2錠)
1日1回 朝食後 28日分

 

(処方3)
クラリスロマイシン錠200mg  1回2錠(1日4錠)
1日2回 朝夕食後 28日分

 

調剤から数日後、患者から尿が赤くなったという連絡があった。
指導薬剤師は実務実習生になぜ尿が赤くなるのか、その理由について調べるように指導した。
実習生は処方された3つの薬物の構造を調べ、尿の着色は、尿中に排出された処方薬の1つとその代謝物によるものであると推測した。そこで、その原因処方薬の紫外可視吸収スペクトルを調べたところ下図のようであった。以下の記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。

 

尿の着色と紫外可視吸収スペクトル 104回薬剤師国家試験問203

 

1 スペクトルの縦軸の吸光度は、透過率の逆数を表している。
2 このスペクトルの測定にはガラス製のセルが用いられる。
3 尿の着色の原因は、220nmから270nmの領域にみられる光の吸収によるものである。
4 335nm付近のピークの波長の光の色は赤色である。
5 尿の着色の原因は、475nm付近にピークを持つ青から緑色の光の吸収によるものである。

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104回薬剤師国家試験 問203 解答解説

 

◆ 1について
1 × スペクトルの縦軸の吸光度は、透過率の逆数を表している。
→ 〇 スペクトルの縦軸の吸光度は、透過度の逆数の常用対数を表している。

 

尿の着色と紫外可視吸収スペクトル 104回薬剤師国家試験問203

 

下記のリンク先を参照
吸光度とは

 

 

◆ 2について
2 × このスペクトルの測定にはガラス製のセルが用いられる。
→ 〇 このスペクトルの測定には石英製のセルが用いられる。

 

ガラスは紫外部領域の電磁波(200nm〜380nm)を吸収する。
よって、紫外部領域の電磁波を利用する場合、ガラス製のセルは用いず、石英製のセルを用いる。

 

 

◆ 3,4について
3 × 尿の着色の原因は、220nmから270nmの領域にみられる光の吸収によるものである。

 

4 × 335nm付近のピークの波長の光の色は赤色である。

 

目が物質の色を認識する際、
物質により可視光が吸収され、吸収されず反射された可視光が色として認識される。
可視光は波長380nm〜800nmの光である。
200nm〜380nmは紫外線であるが、これが吸収・反射されても色として認識されない。

 

 

◆ 5について
5 〇 尿の着色の原因は、475nm付近にピークを持つ青から緑色の光の吸収によるものである。

 

尿が赤色に着色したことについて、
尿中の物質により475nm付近の青から緑色の光が吸収され、
吸収されず反射された赤色の光が物質の色として認識されたと考えられる。

 

尿の着色と紫外可視吸収スペクトル 104回薬剤師国家試験問203

 

リファンピシンとその代謝物により、尿、汗、唾液、痰、涙液などが榿赤色に着色することが知られている。
涙液の着色を介してソフトコンタクトレンズが着色することがあるので注意。
着色が現れても身体に害があるものではないため、服薬は続けるよう指導する。

 

リファンピシンは細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
リファンピシンは、結核、MAC症を含む非結核性抗酸菌症、ハンセン病の治療に用いられる。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第104回問202,203(e-RECさん)

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