溶解とヒクソンクロウェルの式 105回薬剤師国家試験問177
105回薬剤師国家試験 問177
粒子径のみが異なる大小2種の単分散球形固体粒子から成る粉体T及びUを、同一仕込み量(W0)で一定温度の水にそれぞれ投入し攪拌した。溶解せずに残っている量(Wt)を経時的に測定したところ、図のような関係が得られた。この結果の説明に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。ただし、溶解はシンク条件において拡散律速で進行するものとし、試験条件は同じとする。
1 粉体TとUの粒子の溶解現象は、いずれもHixson−Crowell の式に従う。
2 粉体Tの粒子は、粉体Uの粒子よりも粒子径が大きい。
3 粉体Uの粒子は、溶解に伴って粒子の形状が球形から不規則形に変化している。
4 粉体Tの粒子の溶解速度定数は0.006g1/3/minである。
5 試験開始60分後において、溶解した粉体Uの量は0.36gである。
105回薬剤師国家試験 問177 解答解説
◆ 1について
1 〇 粉体TとUの粒子の溶解現象は、いずれもHixson-Crowell の式に従う。
球形粒子からなる粉体の溶解速度に関して次のHixson-Crowellの式が知られている。
W01/3 − Wt1/3 = k・t
W0:初期の粒子質量 Wt:時間tでの粒子質量
k:溶解速度定数 t:時間
設問の図は、球形粒子からなる粉体TとUについて、時間に対するW01/3 − Wt1/3のプロットが右上がりの直線を描いている。
よって、粉体TとUの粒子の溶解現象は、いずれもHixson-Crowell の式に従うと考えられる。
◆ 2について
2 〇 粉体Tの粒子は、粉体Uの粒子よりも粒子径が大きい。
設問の図の直線の傾きはHixson-Crowellの式の溶解速度定数kに等しい。
粉体Uの直線の傾きは粉体Tよりも大きいので、溶解速度定数kの値は粉体Uの方が大きい。
粉体TとUは粒子径のみが異なるので、比表面積は粉体Tよりも粉体Uの方が大きいと考えられる。
比表面積と粒子径は反比例するので、粒子径は粉体Uよりも粉体Tの方が大きいと考えられる。
◆ 3について
3 × 粉体Uの粒子は、溶解に伴って粒子の形状が球形から不規則形に変化している。
→ 〇 粉体Uの粒子は、溶解に伴う粒子の形状の変化はなく、球形を保って溶解する。
Hixson-Crowellの式は球形粒子からなる粉体の溶解速度に関する式であるが、
成立条件として次のことが挙げられる。
・シンク条件(溶解度>>溶液濃度)。
・溶解に伴う粒子形状の変化はなく、粒子が球形を保ったまま溶解する。
・粉体を構成する粒子の粒子径は同一であり、粉体は粒度分布を持たない。
◆ 4について
4 × 粉体Tの粒子の溶解速度定数は0.006g1/3/minである。
→ 〇 粉体Tの粒子の溶解速度定数は0.004g1/3/minである。
設問の図の直線の傾きはHixson-Crowellの式の溶解速度定数kに等しいので、
溶解速度定数を知るには傾きを読めば良い。
粉体Tの直線において、
時間0分と50分のW01/3 − Wt1/3の値は、それぞれ0 g1/3と0.2 g1/3であるので、粉体Tの溶解速度定数kは下記のように求められる。
◆ 5について
5 × 試験開始60分後において、溶解した粉体Uの量は0.36gである。
本問では、初期の粒子質量(W0)がわからないので、
試験開始60分後において、溶解した粉体の質量を求めることができない。
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