薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述 97回薬剤師国家試験問174

97回薬剤師国家試験 問174
薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 ヒグチ(Higuchi)の式において、放出される薬物の累積量は時間の平方根に比例する。
2 ヒクソン−クロウェル(Hixson-Crowell)の式は、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式である。
3 固体分散体中の薬物は、その薬物結晶に比べて溶解速度が小さい。
4 安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて溶解速度が大きい。
5 無水物は、水和物に比べて水中での溶解速度が大きい。

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97回薬剤師国家試験 問174 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 ヒグチ(Higuchi)の式において、放出される薬物の累積量は時間の平方根に比例する。

 

ヒグチ(Higuchi)の式は不溶性マトリックス型徐放性製剤からの薬物放出量に関する式であり、
次式で表される。
Q = [D・(2A−Cs)Cs・t]1/2

 

Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 A:マトリックス中の薬物の全濃度
D:マトリックス中の薬物の拡散係数 Cs:薬物の溶解度
t:時間

 

上式より、
ヒグチ(Higuchi)の式において、放出される薬物の累積量(Q)は時間の平方根(√t)に比例する。

 

関連問題
マトリックス表面からの薬物の放出とHiguchi式 85回問169

 

 

◆ 2について
2 × ヒクソン−クロウェル(Hixson-Crowell)の式は、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式である。
ヒクソン−クロウェル(Hixson-Crowell)の式の成立条件の1つとして、粉体を構成する粒子の粒子径は同一であり、粉体は粒度分布を持たないことが挙げられる。

 

球形粒子からなる粉体の溶解速度に関して次のHixson-Crowellの式が知られている。
W01/3 − Wt1/3 = k・t
W0:初期の粒子質量  Wt:時間tでの粒子質量
k:溶解速度定数  t:時間

 

Hixson-Crowellの式の成立条件として次のことが挙げられる。
・シンク条件(溶解度>>溶液濃度)。
・溶解に伴う粒子形状の変化はなく、粒子が球形を保ったまま溶解する。
・粉体を構成する粒子の粒子径は同一であり、粉体は粒度分布を持たない。

 

 

◆ 3について
3 × 固体分散体中の薬物は、その薬物結晶に比べて溶解速度が小さい。
→ 〇 固体分散体中の薬物は、その薬物結晶に比べて溶解速度が大きい。

 

薬物が担体となる高分子に分散された粉体を固体分散体と呼ぶ。
固体分散体製剤の目的の多くは、薬物を非晶質化することで溶解性を改善することである。
一般に、非晶質は結晶よりも溶解度は大きく、溶解速度が大きい。

 

関連問題
固体分散体の溶解と過飽和 103回問174の5

 

 

◆ 4について
4 × 安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて溶解速度が大きい。
→ 〇 安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて溶解速度が小さい。

 

安定形とは化学ポテンシャルが最も小さい結晶であり、
安定形以外の結晶は準安定形とされる。

 

一般に、安定形は準安定形に比べて融点が高く、溶解度が低く、溶解速度が小さい。

 

 

◆ 5について
5 〇 無水物は、水和物に比べて水中での溶解速度が大きい。

 

ある成分が溶液から結晶化する際、
溶媒分子を取り込んで安定な結晶を形成することがある。
この結晶を溶媒和物と呼び、溶媒分子が水分子の場合を水和物と呼ぶ。
一般に、無水物の結晶は水和物よりも水に対する溶解度が高く、溶解速度が大きい。

 

 

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