薬物の溶解及び放出に関する記述 100回薬剤師国家試験問173

100回薬剤師国家試験 問173
薬物の溶解及び放出に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 結晶多形間で異なる溶解速度を示すのは、各々の固相における化学ポテンシャルが異なるためである。
2 Higuchi式において、単位面積当たりの累積薬物放出量の平方根は、時間に比例する。
3 球体である薬物粒子が、形状を維持したまま縮小しながら溶出する時の溶解速度定数は、Hixson-Crowell式を用いて算出できる。
4 回転円盤法により、固体薬物の表面積を経時的に変化させて溶解実験を行い、Gibbs式を用いることで薬物の溶解速度定数を算出できる。

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100回薬剤師国家試験 問173 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 結晶多形間で異なる溶解速度を示すのは、各々の固相における化学ポテンシャルが異なるためである。

 

安定形とは化学ポテンシャルが最も小さい結晶であり、
安定形以外の結晶は準安定形とされる。

 

一般に、安定形は準安定形に比べて融点が高く、溶解度が低く、溶解速度が小さい。

 

 

◆ 2について
2 × Higuchi式において、単位面積当たりの累積薬物放出量の平方根は、時間に比例する。
→ 〇 Higuchi式において、単位面積当たりの累積薬物放出量は、時間の平方根(√t)に比例する。

 

ヒグチ(Higuchi)の式は不溶性マトリックス型徐放性製剤からの薬物放出量に関する式であり、
次式で表される。
Q = [D・(2A−Cs)Cs・t]1/2

 

Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 A:マトリックス中の薬物の全濃度
D:マトリックス中の薬物の拡散係数 Cs:薬物の溶解度
t:時間

 

上式より、ヒグチ(Higuchi)の式において、
放出される薬物の累積量(Q)は時間の平方根(√t)に比例する。

 

関連問題
不溶性マトリックス型放出制御製剤からの薬物放出機構とHiguchi式 85回問169

 

 

◆ 3について
3 〇 球体である薬物粒子が、形状を維持したまま縮小しながら溶出する時の溶解速度定数は、Hixson-Crowell式を用いて算出できる。

 

球形粒子からなる粉体の溶解速度に関して次のHixson-Crowell(ヒクソン-クロウェル)の式が知られている。
W01/3 − Wt1/3 = k・t
W0:初期の粒子質量  Wt:時間tでの粒子質量
k:溶解速度定数  t:時間

 

Hixson-Crowellの式の成立条件として次のことが挙げられる。
・シンク条件(溶解度>>溶液濃度)。
・溶解に伴う粒子形状の変化はなく、粒子が球形を保ったまま溶解する。
・粉体を構成する粒子の粒子径は同一であり、粉体は粒度分布を持たない。

 

 

◆ 4について
4 × 回転円盤法により、固体薬物の表面積を経時的に変化させて溶解実験を行い、Gibbs式を用いることで薬物の溶解速度定数を算出できる。
→ 〇 回転円盤法により、固体薬物の表面積を一定にさせて溶解実験を行い、Noyes-Whitney式(ノイエス-ホイットニー式)を用いることで薬物の溶解速度定数を算出できる。

 

薬物の表面積が変化しない範囲では、
薬物の溶解速度(dC/dt)について、次のNoyes-Whitneyの式が成り立つ。
dC/dt = k・S・(Cs−C)
dC/dt:溶解速度 k:見かけの溶解速度定数 
S:固体薬物Aの有効表面積 Cs:薬物Aの溶解度 
C:溶液中の薬物Aの濃度

 

Noyes-Whitneyの式の成立条件として、次のことが挙げられる。
・薬物の溶解過程が拡散律速である。
・薬物の拡散がフィックの第一法則に従う。

 

 

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