95回薬剤師国家試験問170 薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述
95回薬剤師国家試験 問170
薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a 結晶多形において、安定形の溶解度は準安定形に比べて大きい。
b 同じ薬物の無水物と水和物を比較した場合、一般に水に対する無水物の溶解度は水和物に比べて大きい。
c ヒグチ ( Higuchi ) の式において、放出される薬物量は時間の二乗に比例する。
d 弱塩基性薬物の溶解度を日本薬局方崩壊試験法における試験液第1液と第2液で比較すると、一般に第1液の方が大きい。
95回薬剤師国家試験 問170 解答解説
◆ aについて
a × 結晶多形において、安定形の溶解度は準安定形に比べて大きい。
→ 〇 結晶多形において、安定形の溶解度は準安定形に比べて小さい。
安定形とは化学ポテンシャルが最も小さい結晶であり、
安定形以外の結晶は準安定形とされる。
一般に、安定形は準安定形に比べて融点が高く、溶解度および溶解速度が小さい。
◆ bについて
b 〇 同じ薬物の無水物と水和物を比較した場合、一般に水に対する無水物の溶解度は水和物に比べて大きい。
ある成分が溶液から結晶化する際、
溶媒分子を取り込んで安定な結晶を形成することがある。
この結晶を溶媒和物と呼び、溶媒分子が水分子の場合を水和物と呼ぶ。
一般に、無水物の結晶は水和物よりも水に対する溶解度が高く、溶解速度が大きい。
関連問題
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◆ cについて
c × ヒグチ ( Higuchi ) の式において、放出される薬物量は時間の二乗に比例する。
→ 〇 ヒグチ ( Higuchi ) の式において、放出される薬物量は時間の平方根(√t)に比例する。
ヒグチ(Higuchi)の式はマトリックス型製剤の薬物放出量に関する式であり、
次式で表される。
Q = [D・(2A−Cs)Cs・t]1/2
Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 A:マトリックス中の薬物の全濃度
D:マトリックス中の薬物の拡散係数 Cs:薬物の溶解度
t:時間
上式より、
ヒグチ(Higuchi)の式において、放出される薬物の累積量(Q)は時間の平方根(√t)に比例する。
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◆ dについて
d 〇 弱塩基性薬物の溶解度を日本薬局方崩壊試験法における試験液第1液と第2液で比較すると、一般に第1液の方が大きい。
日本薬局方崩壊試験法の試験液第1液のpHは約1.2、
第2液のpHは約6.8である。
弱塩基性薬物においては、溶液のpHが低いほど溶解度が大きくなるので、
第1液の方が溶解度は大きい。
なお、弱酸性薬物においては、溶液のpHが高いほど溶解度が大きくなるので、
第2液の方が溶解度は大きい。