86回薬剤師国家試験問172 レオロジーに関する記述
85回薬剤師国家試験 問172
レオロジーに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
a 塑性流動では降伏値よりも大きなずり応力が与えられると、粘度はずり速度の増加とともに増大する。
b 固体含量が50%以上のデンプン懸濁液では、ずり速度の増加とともに粗な充てん構造への変化を起こすため粘度は増加する。
c ニュートン流動体においては、ずり応力を一定に保つと、ずり速度は変化する。
d 懸濁液ではチキソトロピー性が強いと沈降速度は減少するので、懸濁安定性は良くなる。
85回薬剤師国家試験 問172 解答解説
◆ aについて
a × 塑性流動では降伏値よりも大きなずり応力が与えられると、粘度はずり速度の増加とともに増大する。
塑性流動(ビンガム流動)のレオグラムは、降伏値があり、かつ、直線である。
レオグラムが直線ということは、ずり速度およびずり断応力に関わらず粘度は一定であることを示す。
塑性流動の詳細は下記のリンク先を参照
塑性流動(ビンガム流動)のレオグラム 91回問171b
◆ bについて
b 〇 固体含量が50%以上のデンプン懸濁液では、ずり速度の増加とともに粗な充てん構造への変化を起こすため粘度は増加する。
ダイラタント流動のレオグラムは、
ずり応力およびずり速度が大きくなるほど傾きが小さくなる曲線となる。
これは、ダイラタント流動はずり断応力およびずり速度の増加とともに粘度は増加することを示す。
ダイラタント流体では、
ずり応力およびずり速度の増加とともに粗な充てん構造への変化を起こすため粘度は増加する。
ダイラタント流動を示す流体として、
粒子径の小さい非凝集性粒子を50%以上の高濃度で含む水性懸濁液があり、
例として60%デンプン水性懸濁液が挙げられる。
◆ cについて
c × ニュートン流動体においては、ずり応力を一定に保つと、ずり速度は変化する。
→ 〇 ニュートン流動体においては、ずり応力を一定に保つと、ずり速度は変化しない。
ニュートン流動のレオグラムは原点を通る直線であり、
ずり応力が一定ならば、ずり速度も一定である。
◆ dについて
d 〇 懸濁液ではチキソトロピー性が強いと沈降速度は減少するので、懸濁安定性は良くなる。
チキソトロピーとは、せん断応力を加えることにより、網目構造の破壊と共に粘性が低下するが、その後せん断応力を加えるのを中止し静置しても、壊れた網目構造がすぐには修復せず、徐々に修復していくので、粘性の回復も徐々に行われる現象を指す。
粘性がゆっくり回復するということは、懸濁安定性は良いことになる。
チキソトロピーを示す流体の流動曲線(レオグラム)は、
せん断応力を加えてせん断速度が上がっていく時の上昇曲線と、
せん断応力を減少させてせん断速度が低下する時の下降曲線が同一とはならない。
このレオグラムの形をヒステリシスループと呼ぶ。