88回薬剤師国家試験問16 日本薬局方における粘度測定法に関する記述の正誤
88回薬剤師国家試験 問16
日本薬局方における粘度測定法に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 液体の流れに平行な平面の単位面積あたりの内部摩擦力をずり応力(S)、流れに垂直な方向の速度勾配をずり速度(D)とよび、粘度(η)とは、 D=ηSの関係式で示される。
b 粘度の単位としてパスカル秒(Pa・s)またはミリパスカル秒(mPa・s)が用いられる。
c 高分子物質を含む液体の極限粘度を測定することにより、分子量の目安となる情報が得られる。
d 毛細管粘度計を用い、粘度及び密度既知の液体Aについて毛細管を通って流下するに要する時間を測定したところ、t秒を要した。同一の粘度計を用いて同条件で液体Bを測定したところ、2t秒を要した。両液体の密度にかかわらず液体 Bの粘度は液体Aの2倍であるといえる。
e 非ニュートン液体の粘度測定には回転粘度計法が適用でき、測定装置の一つにクェット型粘度計(共軸二重円筒形回転粘度計)がある。
88回薬剤師国家試験 問16 解答解説
◆ aについて
a × 液体の流れに平行な平面の単位面積あたりの内部摩擦力をずり応力(S)、流れに垂直な方向の速度勾配をずり速度(D)とよび、粘度(η)とは、 D=ηSの関係式で示される。
次の@式をニュートンの粘性法則と呼ぶ。
S = η・D …@
S:せん断応力(ずり応力) D:せん断速度(ずり速度)
η:粘度(粘性係数)
ニュートンの粘性法則が成り立つ流体をニュートン流体と呼ぶ。
@式は下記のA式に変換される。
D = (1/η)・S …A
◆ bについて
b 〇 粘度の単位としてパスカル秒(Pa・s)またはミリパスカル秒(mPa・s)が用いられる。
粘度の単位のパスカル秒(Pa・s)は下記のように表せる。
なお、日本薬局方では、
通例、粘度の単位としてミリPa・s(m Pa・s)が用いられる。
関連問題
動粘度の単位 93回問172c
◆ cについて
c 〇 高分子物質を含む液体の極限粘度を測定することにより、分子量の目安となる情報が得られる。
高分子の溶液について、
溶液の極限粘度[η]と高分子の分子量Mの関係式として、
次のマーク−ホウインクの式がある。
[η] = k・Mα
kとαは高分子や溶媒の種類,温度によって決まる定数である。
上式より、極限粘度から高分子の分子量を求めることができる。
◆ dについて
d × 毛細管粘度計を用い、粘度及び密度既知の液体Aについて毛細管を通って流下するに要する時間を測定したところ、t秒を要した。同一の粘度計を用いて同条件で液体Bを測定したところ、2t秒を要した。両液体の密度にかかわらず液体 Bの粘度は液体Aの2倍であるといえる。
毛細管粘度計において、
液体の粘度(η)と液体が毛細管を通って流下するに要する時間(t)と液体の密度(ρ)の関係は次式で表される。
η = k・t・ρ
kは比例定数である。
上式より、液体の粘度の算出には密度が関わるので、dの記述は誤りである。
◆ eについて
e 〇 非ニュートン液体の粘度測定には回転粘度計法が適用でき、測定装置の一つにクェット型粘度計(共軸二重円筒形回転粘度計)がある。
回転粘度計はニュートン流体と非ニュートン流体のいずれの粘度測定にも用いられる。
共軸二重円筒形回転粘度計は,同一中心軸を持つ外筒及び内筒の隙間に液体を満たし,内筒又は外筒を回転させるとき,液体を介して円筒間に伝わるトルク(力)及びそれに対応する角速度を測定する。
その測定結果から、換算式により粘度を算出する。
なお、ウベローデ型粘度計,オストワルド型粘度計などの毛細管粘度計は、ニュートン流体の粘度測定に用いられるが、非ニュートン流体の粘度測定には用いられない。