液体の流動に関する記述の正誤 86回薬剤師国家試験問172

86回薬剤師国家試験 問172
液体の流動に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 液体に加わるせん断応力とせん断速度との間に直線関係が成立する場合の全てをニュートン流動という。
b 高分子溶液の極限粘度を測定すれば高分子の分子量を知ることができる。
c 液体に加わるせん断応力とせん断速度との間に直線関係が成立しない場合をチキソトロピーという。
d 濃厚な懸濁液に加わるせん断応力とせん断速度との間には、原点を通る直線関係が成立しない。

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86回薬剤師国家試験 問172

 

◆ aについて
a × 液体に加わるせん断応力とせん断速度との間に直線関係が成立する場合の全てをニュートン流動という。

 

せん断応力とせん断速度との間に直線関係が成立する流動として、
ニュートン流動と塑性流動(ビンガム流動)がある。

 

各流動の詳細は下記のリンク先を参照
・ニュートン流動については下記のリンク先を参照
ニュートン流動のレオグラム 91回問171a

 

・塑性流動については下記のリンク先を参照
塑性流動(ビンガム流動)のレオグラム 91回問171b

 

 

◆ bについて
b 〇 高分子溶液の極限粘度を測定すれば高分子の分子量を知ることができる。

 

高分子の溶液について、
溶液の極限粘度[η]と高分子の分子量Mの関係式として、
次のマーク−ホウインクの式がある。
[η] = k・Mα
kとαは高分子や溶媒の種類,温度によって決まる定数である。
上式より、極限粘度から高分子の分子量を求めることができる。

 

 

◆ cについて
c × 液体に加わるせん断応力とせん断速度との間に直線関係が成立しない場合をチキソトロピーという。

 

チキソトロピーとは、流動曲線において、
せん断応力を加えてせん断速度が上がっていく時の上昇曲線と、
せん断応力を減少させてせん断速度が低下する時の下降曲線が同一とはならない流動のことである。

 

チキソトロピーについては下記のリンク先を参照
・チキソトロピー 91回問171d

 

 

◆ dについて
d 〇 濃厚な懸濁液に加わるせん断応力とせん断速度との間には、原点を通る直線関係が成立しない。

 

せん断応力とせん断速度との間に原点を通る直線関係が成立するのはニュートン流動である。
濃厚な懸濁液は非ニュートン流動であるので、dの記述は正しい。
なお、でんぷんの60%水性懸濁液などの粒子径の小さい非凝集性粒子を50%以上の高濃度で含む水性懸濁液はダイラタント流動を示す。

 

ダイラタント流動の詳細は下記のリンク先を参照
ダイラタント流動のレオグラムと粘度 91回問171c

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