108回薬剤師国家試験問176 粘弾性の2要素モデルに関する記述
108回薬剤師国家試験 問176
粘弾性の2要素モデルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 Aのスプリングは弾性体のモデル、Bのダッシュポットは粘性体のモデルである。
2 フォークトモデル全体に一定の応力を瞬時にかけてそれを保つとき、モデル全体のひずみは直線的に増加する。
3 マックスウェルモデル全体に加わる応力は、スプリングに加わる応力とダッシュポットに加わる応力の合計である。
4 マックスウェルモデル全体に一定のひずみを与えてそのまま保持するとき、モデル全体にかかる応力は減衰する。
5 マックスウェルモデル全体に一定の応力を瞬時にかけてそれを保つとき、モデル全体のひずみは一定に保たれる。
108回薬剤師国家試験 問176 解答解説
◆ 1について
1 〇 Aのスプリングは弾性体のモデル、Bのダッシュポットは粘性体のモデルである。
粘弾性体のモデルとして、設問の図のような弾性体のスプリングと粘性体のダッシュポットを組み合わせた装置が用いられる。
左のマックスウェル(Maxwell)モデルは、スプリングとダッシュポットを直列に組み合わせた粘弾性体のモデルである。
右のフォークト(Voigt)モデルは、スプリングとダッシュポットを並列に組み合わせた粘弾性体のモデルである。
◆ 2について
2 × フォークトモデル全体に一定の応力を瞬時にかけてそれを保つとき、モデル全体のひずみは直線的に増加する。
フォークトモデルでは、全体に一定の応力を瞬時にかけ、その応力を保つと、時間経過とともにモデル全体のひずみが徐々に増大し、一定値に収束する。これをクリープと呼ぶ。
応力を解除すると、ゆっくりと元の状態に戻る。これをクリープ回復と呼ぶ。
クリープにおけるひずみの変化は下のグラフのように曲線となり、直線的に増加するわけではない。
なお、マックスウェルモデルでは、モデル全体に一定の応力を瞬時にかけてそれを保つとき、モデル全体のひずみは直線的に増加する。
◆ 3について
3 × マックスウェルモデル全体に加わる応力は、スプリングに加わる応力とダッシュポットに加わる応力の合計である。
モデル全体に加わる応力が、スプリングに加わる応力とダッシュポットに加わる応力の合計に等しくなるのは、フォークトモデルである。
マックスウェルモデルでは、スプリングとダッシュポットを直列に組み合わせているので、応力を加えると、それと同じ応力がスプリングとダッシュポットに加わる。
よって、
マックスウェルウェルモデル全体に加わる応力
=スプリングに加わる応力
=ダッシュポットに加わる応力
となる。
一方、フォークトモデルでは、スプリングとダッシュポットを並列に組み合わせているので、応力を加えると、
それがスプリングとダッシュポットに分散して加わる。
よって、
フォークトモデルモデル全体に加わる応力
=スプリングに加わる応力 + ダッシュポットに加わる応力
となる。
◆ 4について
4 〇 マックスウェルモデル全体に一定のひずみを与えてそのまま保持するとき、モデル全体にかかる応力は減衰する。
マクスウェルモデルでは、一定のひずみを生じるのに必要な応力が、時間の経過とともに減少する現象が見られる。これを応力緩和と呼ぶ。
◆ 5について
5 × マックスウェルモデル全体に一定の応力を瞬時にかけてそれを保つとき、モデル全体のひずみは一定に保たれる。
下の図は、マックスウェルモデルにおいて、時間t1より、一定の応力を瞬時にかけてそれを保った場合のひずみと時間の関係を示すグラフである。
まず、t1において、応力開始とともにスプリングによるひずみが瞬時にその応力の限界まで生じる。
次に、ダッシュポットによるひずみが時間経過とともに直線的に増加する。
ダッシュポットによるひずみがその応力の限界まで到達すると、
その後、全体のひずみは一定となる。
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