アルデヒド,ケトンの反応性と置換基の立体障害,電子供与・求引性の関係 89回薬剤師国家試験問10bc

第89回薬剤師国家試験 問10bc
アルデヒド及びケトンヘの求核付加反応に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

b トリクロロアセトアルデヒドは水に溶かすと、主として水和物として存在する。

 

c 2,2,6-トリメチルシクロヘキサノンは、HCNと反応して収率よくシアノヒドリンを与える。

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第89回薬剤師国家試験 問10bc 解答解説

 

◆ bについて
b ○ トリクロロアセトアルデヒドは水に溶かすと、主として水和物として存在する。

 

 アルデヒド・ケトンに対する水分子の求核付加反応について、反応が進んだ場合、結果として、元はカルボニルだった炭素に2つのOHが結合した水和物(ヒドレートhydrate)が生成する。1つの炭素に2つのOHが結合した構造をジェミナルジオール(gem-ジオール)とも呼ぶ。

 

アルデヒド・ケトンに対する水分子の求核付加反応は可逆反応であり、平衡が出発物か生成物のどちらに傾くかは基質の構造の影響を受ける。

 

★ アルデヒド・ケトンの求核付加反応における置換基の立体障害
反応性に対する立体的な障害について、カルボニルに結合する置換基の立体障害が大きいほど、カルボニル炭素に対する求核付加は起こりにくくなり、平衡は出発物に偏る。カルボニルの立体障害が小さいほど、求核付加は起こりやすくなり、平衡は生成物に偏る。置換基の立体障害の観点から、アルデヒドとケトンを比較すると、アルデヒドは置換基の立体障害が比較的に小さいため求核付加が起こりやすく平衡は生成物に偏り、ケトンは置換基の立体障害が比較的に大きいため求核付加が起こりにくく平衡は出発物に偏るという傾向がある。

 

★ アルデヒド・ケトンの求核付加反応における置換基の電子効果
反応性に対する置換基の電子効果の影響ついて、置換基が電子供与性の電子効果を与えるものの場合、カルボニル炭素の正電荷が弱まるので、求核付加反応が起こりにくくなり、平衡は出発物に偏る。一方、置換基が電子求引性の電子効果を与えるものの場合、カルボニル炭素の正電荷が強まるので、求核付加反応が起こりやすくなり、平衡が生成物に偏る。

 

設問のトリクロロアセトアルデヒドは、カルボニルにCCl3が置換している。CCl3は電気陰性度の大きいClが3つも結合していることから電子求引性の電子効果を与え、トリクロロアセトアルデヒドのカルボニル炭素は正の分極度合いが強くなっていることから、水分子の求核付加反応が起こりやすくなっている。よって、トリクロロアセトアルデヒドは水に溶かすと、水分子の求核付加反応が進み、結果として、元はカルボニルだった炭素に2つのOHが結合した水和物として主に存在する。

 

★ アルデヒド・ケトンに対する水の求核付加反応(水和)におけるpHの影響
中性条件だと速度が遅く進まない。塩基性条件だと、水分子がOH−となり、求核性が増すので反応が速くなる。酸性条件だと、アルデヒド・ケトンのカルボニルの酸素が酸によりプロトン化され、カルボニルの炭素の正の分極度合い(Cδ+)が強まり求核試薬との反応性が高まるので、水分子の付加反応が速くなる。

 

アルデヒド,ケトンの反応性と置換基の立体障害,電子供与・求引性 89回問10bc

 

 

◆ cについて
c × 2,2,6-トリメチルシクロヘキサノンは、HCNと反応して収率よくシアノヒドリンを与える。

 

アルデヒド・ケトンに対するシアン化物イオンの求核付加反応は可逆反応であり、平衡が出発物か生成物のどちらに傾くかは、カルボニルに結合する置換基の立体障害や電子効果の影響を受ける。

 

2,2,6-トリメチルシクロヘキサノンは、カルボニルに置換するアルキル基による立体障害が大きい。さらに、アルキル基による電子供与性電子効果により、カルボニル炭素の正の分極度合い(Cδ+)が低下し、求核剤との反応性が低下している。
よって、2,2,6-トリメチルシクロヘキサノンとHCNとの反応は進みにくい。

 

アルデヒド,ケトンの反応性と置換基の立体障害,電子供与・求引性 89回問10bc

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