水−塩化ナトリウムの相図 103回薬剤師国家試験問92
103回薬剤師国家試験 問92
図は一定圧力条件下での水−塩化ナトリウム二水和物(NaCl・2H2O)の二成分の状態を表したもの(相図)である。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 領域ア内の任意の点で生じている固体は、すべて純水からなる。
2 領域イ内の任意の点の塩化ナトリウム濃度は、一定である。
3 領域ウ内の任意の点(線上は含まない)における熱力学的自由度は、条件指定に使っている圧力も含めて1である。
4 曲線AB は水と塩化ナトリウムの溶解度積を表している。
5 点Bでは、液相、固体の水、固体の塩化ナトリウム二水和物の三相が平衡状態にある。
103回薬剤師国家試験 問92 解答解説
◆ 1,4,5について
1 〇 領域ア内の任意の点で生じている固体は、すべて純水からなる。
4 × 曲線AB は水と塩化ナトリウムの溶解度積を表している。
→ 〇 曲線AB は水に対する塩化ナトリウムの溶解度を表している。
5 〇 点Bでは、液相、固体の水、固体の塩化ナトリウム二水和物の三相が平衡状態にある。
設問の図は、二成分系の固相−液相平衡の状態図のうち、
共融混合物を形成する場合のものである。
点Bにおいては、
塩化ナトリウム水溶液の液相,水の固相(氷),塩化ナトリウム二水和物の固相の三相が共存する。
この点を共融点と呼び、共融点の混合物を共融混合物と呼ぶ。
共融混合物を形成する2つの固相の混合物は、不均一で2つの結晶の混合物であり、これを共晶と呼ぶ。
また、共晶のうち、1つの成分が水の場合を氷晶と呼ぶ。
◆ 2について
2 × 領域イ内の任意の点の塩化ナトリウム濃度は、一定である。
領域イ内において、
系は塩化ナトリウム水溶液の液相の一相であり、
任意の点の塩化ナトリウム濃度は横軸の値に等しい。
◆ 3について
3 × 領域ウ内の任意の点(線上は含まない)における熱力学的自由度は、条件指定に使っている圧力も含めて1である。
→ 〇 領域ウ内の任意の点(線上は含まない)における熱力学的自由度は、条件指定に使っている圧力も含めて2である。
自由度(F)とは、
相の数を維持するのに自由に決定できる示強性状態関数(温度・圧力など)の数である。
ギブズの相律によると、
自由度(F)は次式で計算される。
F = C−P+2
(C:成分の数 P:相の数)
図の領域ウ内の任意の点(線上は含まない)は、
二成分系で相の数は2なので、
F = C−P+2 より、
F = 2−2+2 = 2
と計算される。
領域ウ内の自由度が2ということは、
領域ウの状態(塩化ナトリウムの固相+塩化ナトリウム水溶液の液相の二相状態)を形成・維持するのに、
自分たちで自由に決められる示強性状態関数の数は、
条件指定に使っている圧力も含めて2ということを意味する。
★ 共融点の自由度
図の点B(共融点)は、
二成分系で相の数は3なので、
F = C−P+2 より、
F = 2−3+2 = 1
と計算される。
共融点の自由度が1ということは、
領域ウの状態(塩化ナトリウムの固相+塩化ナトリウム水溶液の液相の二相状態)を形成・維持するのに、
自分たちで自由に決められる示強性状態関数の数は、
条件指定に使っている圧力も含めて1ということを意味する。
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