水−フェノールの相互溶解度曲線 84回薬剤師国家試験問17
84回薬剤師国家試験 問17
下の図は水−フェノール2成分系の相互溶解度曲線である。
図中のA、Bは、図に示されている温度と組成で表される溶液を意味する。次の記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 相平衡にあるAとBの水含量を比較すると、Aの方が大きい。
b 温度が66.4 ℃を越えると溶液は直ちに沸騰する。
c 水とフェノールを質量比1:1で混合し、40 ℃で激しく振り混ぜると系全体は直ちに透明な溶液となる。
d フェノールの化学ポテンシャルはAとBで等しい。
e Aの水蒸気分圧は40 ℃の純水の蒸気圧より高い。
84回薬剤師国家試験 問17 解答解説
◆ aについて
a 〇 相平衡にあるAとBの水含量を比較すると、Aの方が大きい。
フェノールの質量分率はBよりもAの方が低いので、
水含量はBよりもAの方が大きい。
◆ bについて
b × 温度が66.4 ℃を越えると溶液は直ちに沸騰する。
図の曲線の外側では1相の均一な溶液であり、
内側では組成の異なる二相が共存する。
66.4℃は相互溶解度曲線の極大点の温度であり、66.4℃以上の温度なら、フェノールと水はどのような混合割合でも混じり合って1相となる。沸騰するわけではない。
なお、本問の66.4℃のように、
相互溶解度曲線の極大点(または極小点)の温度を臨界溶解温度(臨界共溶温度)と呼ぶ。
◆ cについて
c × 水とフェノールを質量比1:1で混合し、40 ℃で激しく振り混ぜると系全体は直ちに透明な溶液となる。
水とフェノールの質量比が1:1で、温度が40 ℃である点は、
下記の点Pである。
点Pは相互溶解度曲線の内側なので系は二相に分離する。
点Pから引いた連結線と相互溶解度曲線との交点(AとB)の組成が
分離した二相の組成を表す。
◆ dについて
d 〇 フェノールの化学ポテンシャルはAとBで等しい。
相平衡にあるAとBのフェノールおよび水の化学ポテンシャルは等しい
◆ eについて
e × Aの水蒸気分圧は40 ℃の純水の蒸気圧より高い。
→ 〇 Aの水蒸気分圧は40 ℃の純水の蒸気圧より低い。
分圧はモル分率に比例する。
Aの水のモル分率は1より小さいので、
Aの水蒸気分圧は40 ℃の純水の蒸気圧より低い。