水の性質に関する記述の正誤 84回薬剤師国家試験問16

84回薬剤師国家試験 問16
水の性質に関する次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

a 過冷却の状態にある水が同温度の氷へ相変化するとき、化学ポテンシャルは低下する。
b 沸点で水が気化するとき、水1モルあたりのエントロピーは増大する(ΔS > 0)が、エンタルピーは低下する(ΔH < 0)。
c 0 ℃において平衡にある氷と水の屈折率は等しい。
d 液相中の水分子は、温度上昇とともにH3O+とOHとに電離しやすくなる。

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84回薬剤師国家試験 問16 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 過冷却の状態にある水が同温度の氷へ相変化するとき、化学ポテンシャルは低下する。

 

詳細は下記のリンク先を参照
過冷却の水が氷へ相変化するとき化学ポテンシャルは低下 84回問16a

 

 

◆ bについて
b × 沸点で水が気化するとき、水1モルあたりのエントロピーは増大する(ΔS>0)が、エンタルピーは低下する(ΔH<0)。
→ 〇 沸点で水が気化するとき、水1モルあたりのエントロピーは増大する(ΔS>0)が、エンタルピーも増大する(ΔH>0)。

 

仕事が体積変化に伴う仕事(膨張・圧縮)に限られる場合、
定圧条件下で系に出入りする熱(q p)はエンタルピー変化(僣)に等しい。
系が純水で、水が気化するとき、吸熱するのでエンタルピー変化は正であり(僣>0)、エンタルピーは増大する。

 

エントロピー(S)とは、
系の乱雑さを定量的に表す熱力学量であり、
乱雑さが大きいほど、エントロピー(S)の値は大きい。
一般に、固体→液体→気体と物理的状態が変化するのに伴い、
分子間相互作用が切断されて分子の束縛は小さくなり、
系の乱雑さは増大し、エントロピー(S)は増大すると考えられる。

 

関連問題
液体の水が気化する時のエントロピー変化 82回問28a

 

 

◆ cについて
c × 0 ℃において平衡にある氷と水の屈折率は等しい。

 

光の屈折は、媒質によって光の速度が異なるために起こる。
媒質ごとに光の速度が異なるのは、
光と媒質との相互作用が異なるためである。
同じ分子でも媒質の密度が異なると、
光と媒質の相互作用は異なるので、
氷と水の屈折率は異なる。
一般に、密度が高いほど、屈折率は高くなる傾向にある。

 

 

◆ dについて
d 〇 液相中の水分子は、温度上昇とともにH3O+とOHとに電離しやすくなる。

 

水は下記のように自己解離する。これを自己プロトリシスと呼ぶ。

 

水の気化のエントロピーとエンタルピーの変化 84回薬剤師国家試験問16

 

この解離平衡の平衡定数は水のイオン積(Kw)と呼ばれ、
次式で表される。

 

Kw = [H3O+][ OH]

 

温度が高くなるほど、水は電離しやすくなり、
自己プロトリシスの平衡は右に偏り、
Kwの値は高くなる。

 

 

 

 

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