相変化 温度の変化に伴う化学ポテンシャルの変化 91回薬剤師国家試験問18

91回薬剤師国家試験 問18
一定圧力下で、純物質の固相の温度を上げていくと、固相、液相、気相に変化する。図は温度Tの変化に伴う化学ポテンシャルμの変化を示す。固相、液相、気相の化学ポテンシャルがμs、μ? 、μgで示されている。次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

相変化 温度の変化に伴う化学ポテンシャルの変化 91回薬剤師国家試験問18

 

a 各相の化学ポテンシャルの勾配はエンタルピーを示す。
b 液相の温度を上げていくと、沸点Tb 以上でμ? > μgとなり、自発的に気相に変化する。
c 液相の温度を下げていくと、凝固点Tf 以下ではμs < μ?となり、自発的に固相に変化しない。
d 凝固点及び沸点では二相共存であり、相律によるとそれらの点での自由度は1である。

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91回薬剤師国家試験 問18 解答解説

 

◆ aについて

 

a × 各相の化学ポテンシャルの勾配はエンタルピーを示す。
→ 〇 各相の化学ポテンシャルの勾配はモルエントロピー(1モルあたりのエントロピー)を示す。

 

相変化 温度の変化に伴う化学ポテンシャルの変化 91回薬剤師国家試験問18

 

 

◆ b,cについて
b 〇 液相の温度を上げていくと、沸点Tb 以上でμl > μgとなり、自発的に気相に変化する。

 

c × 液相の温度を下げていくと、凝固点Tf 以下ではμs < μlとなり、自発的に固相に変化しない。
→ 〇 液相の温度を下げていくと、凝固点Tf 以下ではμs < μlとなり、自発的に固相に変化する。

 

設問の図は、純物質(一成分系)の相変化における、
温度と化学ポテンシャルの関係を示す。

 

熱力学的に化学ポテンシャルの小さい方が安定である。
よって、系は化学ポテンシャルの小さい状態になろうとするので、
温度変化に伴い、グラフの実線に沿って物理的状態が変化する。

 

相変化 温度の変化に伴う化学ポテンシャルの変化 91回薬剤師国家試験問18

 

なお、本問のように系が純物質(一成分系)の場合に限り、
縦軸の化学ポテンシャル(μ)はモルギブズエネルギー(Gm)に等しい。

 

 

◆ dについて
d 〇 凝固点及び沸点では二相共存であり、相律によるとそれらの点での自由度は1である。

 

自由度(F)とは、
相の数を維持するのに自由に決定できる示強性状態関数(温度・圧力など)の数である。

 

ギブズの相律によると、
自由度(F)は次式で計算される。
F = C−P+2
(C:成分の数 P:相の数)

 

設問の図において、
温度Tb(沸点・凝縮点)では液相の化学ポテンシャル(μ)と気相の化学ポテンシャル(μ)が等しいことから、液相と気相の二相が共存する(P=2)。
温度Tf(融点・凝固点)では固相の化学ポテンシャル(μ)と液相の化学ポテンシャル(μ)が等しいことから、固相と液相の二相が共存する(P=2)。

 

 

また、本問の系は純物質(一成分系)なので成分の数は1である(C=1)。

 

以上より、凝固点および沸点での自由度は、
F = C−P+2 より、
F = 1−2+2 = 1
と計算される。

 

TfおよびTbの自由度が1ということは、
二相共存状態を維持するのに自由に決定できる示強性状態関数の数は1つということである。
例えば、温度を自由に決めると、二相共存を維持するのに、他の圧力などの示強性状態関数は自動的に決まることになる。

 

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