質量分析法に関する記述のうち正しいのはどれか 102回薬剤師国家試験問100

102回薬剤師国家試験 問100
質量分析法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 モノアイソトピック質量は、各原子の全ての安定同位体を天然存在比に基づいて考慮することで算出される。
2 質量スペクトルの中で、強度が一番大きいピークは基準ピークとよばれる。
3 電子イオン化法(EI)は、タンパク質の分子量測定に適している。
4 飛行時間型の質量分析計では、質量電荷比(m/z)の大きいイオンほど遅く移動し、飛行時間が長い。
5 m/z = 200.100と200.050の2つのピークを分離できる分解能は、2000である。

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102回薬剤師国家試験 問100 解答解説

 

◆ 1について
1 × モノアイソトピック質量は、各原子の全ての安定同位体を天然存在比に基づいて考慮することで算出される。

 

モノアイソトピック質量とは、構成する各原子について天然存在比最大の同位体の質量のみを用いて計算したイオンや分子の精密質量のことである。

 

詳細は下記のリンク先を参照
モノアイソトピック質量,ノミナル質量,平均質量の違い 102回問100の1

 

 

◆ 2について
2 〇 質量スペクトルの中で、強度が一番大きいピークは基準ピークとよばれる。

 

詳細は下記のリンク先を参照
基準ピークと分子イオンピーク

 

 

◆ 3について
3 × 電子イオン化法(EI)は、タンパク質の分子量測定に適している。

 

タンパク質などの高分子の分子量測定のイオン化には、
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法やエレクトロスプレーイオン化(ESI)法が適している。

 

MALDI法,ESI法については下記のリンク先を参照
MALDI法の原理と特徴

 

ESI法の原理と特徴

 

 

電子衝撃イオン化法(EI)法は、
分子量が1000までの低分子の、
揮発性試料または気体試料のイオン化に適用される。

 

電子イオン化(EI)法については下記のリンク先を参照
電子イオン化(EI)法の原理と特徴

 

 

◆ 4について
4 〇 飛行時間型の質量分析計では、質量電荷比(m/z)の大きいイオンほど遅く移動し、飛行時間が長い。

 

飛行時間型質量分析計(TOF-MS)は、イオンが真空の分析管を通過して検出器に到達するまでの飛行時間の違いを利用して質量分離を行う。
質量電荷比(m/z)の小さいイオンほど速く移動し、飛行時間が短い。
質量電荷比(m/z)の大きいイオンほど遅く移動し、飛行時間が長い。

 

飛行時間型質量分析計(TOF-MS)は、原理上、測定質量の上限はない。

 

 

◆ 5について
5 m/z = 200.100と200.050の2つのピークを分離できる分解能は、2000である。
→ 〇 m/z = 200.100と200.050の2つのピークを分離できる分解能は、約4000である。

 

m/z = MとM+儁の2つのピークを分離できる分解能は下記のように計算される。

 

質量分析法に関する記述のうち正しいのはどれか 102回薬剤師国家試験問100

 

よって、
設問の「m/z = 200.100と200.050の2つのピークを分離できる分解能」は下記のように計算される。

 

質量分析法に関する記述のうち正しいのはどれか 102回薬剤師国家試験問100

 

質量分解能とは、質量分析において近接した二つのピークをどれくらい明瞭に分離できるかを示す指標である。
質量分解能が高いほど、小さい質量差のピーク同士を分離して検出することが可能になる。
ただし、一般に分解能を上げると検出感度は低下する。
分解能を上げるには検出器のスリットを狭くする必要があり、
そうすると検出器に到達するイオン量が少なくなるため、検出感度は低下する。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第102回問100(e-RECさん)

 

 

 

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