89回薬剤師国家試験問24 質量分析法

89回薬剤師国家試験 問24
質量分析法に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 化学イオン化法は、生体高分子を非破壊でイオン化する方法である。
2 タンパク質の分子量測定には、電子衝撃イオン化法が適している。
3 質量スペクトルの中で強度が一番大きいピークは、分子イオンピークとよばれる。
4 m/z値が1000.0と1000.1のピークが明瞭に区別できる場合の分解能は、10000である。
5 常圧でイオン化できる方法は、未だ開発されていない。

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89回薬剤師国家試験 問24 解答解説

 

◆ 1について
1 × 化学イオン化法は、生体高分子を非破壊でイオン化する方法である。

 

化学イオン化法(CI)では、
電子イオン化(EI)法より少ないがフラグメンテーションが起こる場合がある。

 

化学イオン化法は揮発性の低分子(分子量1000程度まで)のイオン化に適する。
よって、化学イオン化法は難揮発性物質や高分子には適さない。
また、化学イオン化法は試料分子を加熱気化するため、熱分解しにくい分子に限られる。

 

化学イオン化法(CI)については下記のリンク先を参照
化学イオン化法(CI)の原理と特徴

 

 

◆ 2について
2 × タンパク質の分子量測定には、電子衝撃イオン化法が適している。

 

タンパク質などの生体高分子のイオン化には、
エレクトロスプレーイオン化(ESI)法やマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が適している。

 

電子衝撃イオン化法(EI)法は、
分子量が1000までの低分子の、
揮発性試料または気体試料のイオン化に適用される。

 

電子イオン化(EI)法については下記のリンク先を参照
電子イオン化(EI)法の原理と特徴

 

 

◆ 3について
3 × 質量スペクトルの中で強度が一番大きいピークは、分子イオンピークとよばれる。
→ 〇 質量スペクトルの中で、強度が一番大きいピークは基準ピークとよばれる。

 

詳細は下記のリンク先を参照
基準ピークと分子イオンピーク

 

 

◆ 4について
4 〇 m/z値が1000.0と1000.1のピークが明瞭に区別できる場合の分解能は、10000である。

 

m/z値がMとM+儁の2本のピークが明瞭に区別できる場合の分解能は下記のように計算される。

 

89回薬剤師国家試験問24 質量分析法

 

よって、
設問の「m/z値が1000.0と1000.1のピークが明瞭に区別できる場合の分解能」は下記のように計算される。

 

89回薬剤師国家試験問24 質量分析法

 

質量分解能とは、質量分析において近接した二つのピークをどれくらい明瞭に分離できるかを示す指標である。
質量分解能が高いほど、小さい質量差のピーク同士を分離して検出することが可能になる。
ただし、一般に分解能を上げると検出感度は低下する。
分解能を上げるには検出器のスリットを狭くする必要があり、そうすると検出器に到達するイオン量が少なくなるため、検出感度は低下する。

 

 

◆ 5について
5 × 常圧でイオン化できる方法は、未だ開発されていない。

 

大気圧下でイオン化する方法として、
エレクトロスプレーイオン化(ESI)法と大気圧化学イオン化(APCI)法がある。
また、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法は、通常、高真空条件下で行われるが、
大気圧下で行うMALDI(AP-MALDI)が開発されている。

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