89回薬剤師国家試験問26 C5H10Oの質量スペクトル
89回薬剤師国家試験 問26
下の図は分子式C5H10Oで表される化合物A〜Cのうち、いずれかの質量スペクトル(EI-MS)である。
この化合物のCCl4溶液のIRスペクトルは、1720 cm-1に非常に強い吸収を示す。
次の記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 横軸の目盛m/zのzは、イオンの電荷数である。
b 縦軸は、分子イオンピークに対する相対強度(%)を示す。
c m/z 58は、分子イオンからエチレンがMcLafferty転位により脱離したフラグメントイオンピークであると推定される
d m/z 43は、メチルケトンに由来するフラグメントイオンピークであると推定される。
e この化合物の構造は、Aと推定される
89回薬剤師国家試験 問26 解答解説
◆ a,bについて
a 〇 横軸の目盛m/zのzは、イオンの電荷数である。
b × 縦軸は、分子イオンピークに対する相対強度(%)を示す。
→ 〇 縦軸は、基準ピークに対する相対強度(%)を示す。
詳細は下記のリンク先を参照
マススペクトルの縦軸と横軸
◆ cについて
c 〇 m/z 58は、分子イオンからエチレンがMcLafferty転位により脱離したフラグメントイオンピークであると推定される
問題文に「この化合物のCCl4溶液のIRスペクトルは、1720 cm-1に非常に強い吸収を示す。」とあるが、
1800〜1650 cm-1付近の強い吸収はカルボニルの伸縮振動に由来すると考えられる。
さらに、m/z 88とm/z 60の差が28であることから、
分子イオンからエチレン(分子量28)がMcLafferty転位により脱離したと考えられる。
このことから、カルボニルのγ位に水素が存在する構造を有すると考えられる。
◆ dについて
d 〇 m/z 43は、メチルケトンに由来するフラグメントイオンピークであると推定される。
◆ eについて
e 〇 この化合物の構造は、Aと推定される
アセチル基を有し、かつ、
カルボニルのγ位に水素を有するのは、
化合物Aである。
m/z 43のアセチル基のフラグメントは、
下記のようにα開裂により生成したと考えられる。
m/z 58のフラグメントは、
下記のようにマクラファティー転位により生成したと考えられる。