93回薬剤師国家試験問31 C9H9BrO2の質量スペクトル
93回薬剤師国家試験 問31
次の図は分子式C9H9BrO2で表される芳香族化合物A〜Cの、
いずれかの質量スペクトル (EI-MS) である。
これに関する記述の正誤について、正しいのはどれか。
a 分子イオンピークにおいて、同位体ピークとの強度比が約1:1であるのは、臭素原子を1つ含むためである。
b m/z 200 (その同位体ピークm/z 202) は、分子イオンからエチレンがMcLafferty転位により脱離したフラグメントイオンピークであると推定される。
c m/z 183 (その同位体ピークm/z 185)は、[C7H4BrO]+に帰属される。
d この化合物の構造はAである。
93回薬剤師国家試験 問31 解答解説
◆ aについて
a 〇 分子イオンピークにおいて、同位体ピークとの強度比が約1:1であるのは、臭素原子を1つ含むためである。
詳細は下記のリンク先を参照
臭素を含む場合の同位体ピーク
臭素の安定同位体の天然存在比は、
79Br:81Br=約1:1なので、
臭素を1つ含むイオンのピークは、
2マスユニット間隔で強度比が約1:1の2本のピークとして現れる。
◆ b,dについて
b 〇 m/z 200 (その同位体ピークm/z 202) は、分子イオンからエチレンがMcLafferty転位により脱離したフラグメントイオンピークであると推定される。
d × この化合物の構造はAである。
→ 〇 この化合物の構造はBである。
設問の化合物(C9H9BrO2)の分子量は228または230であるので、
m/z 200 (その同位体ピークm/z 202)のピークは、
分子イオンからエチレン(分子量28)がMcLafferty転位(マクラファティー転位)により脱離したフラグメントイオンピークであると推定される。
McLafferty転位については下記のリンク先を参照
マクラファティー(McLafferty)転位とは
McLafferty転位が起こるのはカルボニルのγ位に水素を持つ化合物であるが、
γ水素を持つのはBの化合物だけである。
◆ cについて
c 〇 m/z 183 (その同位体ピークm/z 185)は、[C7H4BrO]+に帰属される。
m/z 183 (その同位体ピークm/z 185)は、
下記のように分子イオンでα開裂が起こって生成した[C7H4BrO]+のフラグメントに由来すると考えられる。