87回薬剤師国家試験問27 一置換ベンゼン誘導体(C10H12O)の質量スペクトル
87回薬剤師国家試験 問27
下の図は一置換ベンゼン誘導体(C10H12O)の質量スペクトル(EI-MS)である。
次の記述の正誤について,正しいものはどれか。
a フラグメントピークm/z 77は,ベンゼン誘導体によく見られるピークなので基準ピーク(base peak)とよばれる。
b フラグメントピークm/z 105は,[C6H5CO]+に帰属される。
c フラグメントピークm/z 120は,[M−C2H4]+に帰属される。
d この化合物は,1-フェニル-2-ブタノンと推定される。
87回薬剤師国家試験 問27
◆ aについて
a × フラグメントピークm/z 77は,ベンゼン誘導体によく見られるピークなので基準ピーク(base peak)とよばれる。
基準ピークは最も強度の大きいピークである。
本問のスペクトルでは、m/z 77が基準ピークである。
なお、フラグメントピークm/z 77は、
ベンゼン環に由来するイオン([C6H5]+)のピークである。
◆ bについて
b 〇 フラグメントピークm/z 105は,[C6H5CO]+に帰属される。
m/z 105のピークは、
ベンゾイル基に由来するイオン([C6H5CO]+)のピークと考えられる。
◆ cについて
c 〇 フラグメントピークm/z 120は,[M−C2H4]+に帰属される。
m/z 148とm/z 120の差が28であることから、
フラグメントピークm/z 120は、
分子イオンからエチレン(分子量28)がMcLafferty転位により脱離したフラグメントイオンピークであると考えられる。
◆ dについて
d × この化合物は,1-フェニル-2-ブタノンと推定される。
→ 〇 この化合物は,1-フェニル-1-ブタノンと推定される。
下記は1-フェニル-2-ブタノンの構造である。
1-フェニル-2-ブタノンにはベンゾイル基はなく、
マクラファティー転位によりエチレンが脱離する構造もない。
下記は1-フェニル-1-ブタノンの構造であり、
α開裂によりm/z 105のベンゾイル基のフラグメントイオンを生成する。
また、1-フェニル-1-ブタノンでは下記のようにマクラファティー転位によるエチレンの脱離が起こる。