94回薬剤師国家試験問31 ジブロモベンゼンC6H4Br2の質量スペクトル
94回薬剤師国家試験 問31
化合物Aの質量分析スペクトル (EI-MS) は下図のとおりである。
また、高分解能測定により、その組成はC6H4Br2であることがわかった。
また、1H-NMR測定を行ったところ、7.2 ppm付近に、シグナルを1本観測したのみであった。
以下の記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 臭素の安定同位体は、整数原子量が79と81のものがほぼ1:1で存在するため、M+ (分子イオンピーク) とM++2、M++4の3本のピークは、強度比約1:2:1で観測される。
b ほぼ同じ強度をもつ155と157の2本のピークは、分子イオンから臭素原子が1つ脱離したフラグメントに由来する。
c 精密質量は、各原子の安定同位体の比率を考慮した平均原子量をもとに計算される。
d 1H-NMR測定で1本しかピークが観測されなかったのは、4つのプロトンが磁気的等価な関係にあったためである。
e 化合物Aは、m-ジブロモベンゼンである。
94回薬剤師国家試験 問31 解答解説
◆ aについて
a 〇 臭素の安定同位体は、整数原子量が79と81のものがほぼ1:1で存在するため、M+ (分子イオンピーク) とM++2、M++4の3本のピークは、強度比約1:2:1で観測される。
詳細は下記のリンク先を参照
臭素を含む場合の同位体ピーク
設問の化合物は2個の臭素を持つので、
分子イオンピークについて、
M+ ,M++2,M++4の3本のピークが、
強度比約1:2:1で観測されている。
◆ bについて
b 〇 ほぼ同じ強度をもつ155と157の2本のピークは、分子イオンから臭素原子が1つ脱離したフラグメントに由来する。
臭素の安定同位体の天然存在比は、
79Br:81Br = 約1:1 である。
よって、1個の臭素を含むイオンのピークは、
2マスユニット間隔で強度比が約1:1の2本のピークとして出現する。
◆ cについて
c × 精密質量は、各原子の安定同位体の比率を考慮した平均原子量をもとに計算される。
各原子の安定同位体の比率を考慮した平均原子量をもとに計算される質量は平均質量(相対分子質量)である。
詳細は下記のリンク先を参照
モノアイソトピック質量,ノミナル質量,平均質量の違い 102回問100の1
◆ d,eについて
d 〇 1H-NMR測定で1本しかピークが観測されなかったのは、4つのプロトンが磁気的等価な関係にあったためである。
e × 化合物Aは、m-ジブロモベンゼンである。
→ 〇 化合物Aは、p-ジブロモベンゼンである。
p-ジブロモベンゼンは4つのプロトンが等価であるので、
1H-NMRで1本のシグナルしか観測されない。