91回薬剤師国家試験問31 安息香酸の質量分析 ベンゼン環,ベンゾイル基
91回薬剤師国家試験 問31
安息香酸クロリドとイソプロパノールを反応させた後、
過剰の安息香酸クロリドを水で加水分解したところ、
化合物Aと化合物Bが得られた。
化合物Aと化合物Bの混合物のエーテル溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出すると、
化合物Bだけが水層に移行した。
下の図(ア及びイ)は、
化合物A及び化合物Bいずれかの質量スペクトル(EI-MS)である。
以下の記述a〜eのうち、正しいものはどれか。
a アのスペクトルに見られるm/z 164のピークは、化合物Aの分子イオンピークに相当する。
b 化合物Bは、安息香酸イソプロピルエステルである。
c アとイのスペクトルでは、基準ピークのm/z値が異なる。
d m/z 105のピークは、両スペクトルとも同じフラグメントイオンのピークである。
e m/z 77のピークは、両スペクトルともベンゼン環に由来するイオンピークである。
91回薬剤師国家試験 問31 解答解説
酸ハロゲン化物に求核試薬としてアルコールを反応させるとエステルが生成する。
詳細は下記のリンク先を参照
酸塩化物にアルコールでエステル化 98回問104の5
安息香酸クロリドとイソプロパノールを反応させると、
安息香酸イソプロピルが生成する。
過剰の安息香酸クロリドを水で加水分解すると、
安息香酸が生成する。
問題文に「化合物Aと化合物Bの混合物のエーテル溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出すると、
化合物Bだけが水層に移行した。」とある。
安息香酸イソプロピルと安息香酸のエーテル溶液を弱塩基性の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出すると、
酸性物質である安息香酸が水層に移行するので、
化合物Bが安息香酸であり、
化合物Aが安息香酸イソプロピルだと考えられる。
◆ a,bについて
a 〇 アのスペクトルに見られるm/z 164のピークは、化合物Aの分子イオンピークに相当する。
b × 化合物Bは、安息香酸イソプロピルエステルである。
→ 〇 化合物Bは、安息香酸である。
アのスペクトルに見られるm/z 164のピークは、
化合物A(安息香酸イソプロピル)の分子イオンピークに相当する。
◆ cについて
c × アとイのスペクトルでは、基準ピークのm/z値が異なる。
→ 〇 アとイのスペクトルでは、基準ピークのm/z値が同じである。
基準ピークについては下記のリンク先を参照
基準ピークと分子イオンピーク
アとイのスペクトルでは、
基準ピークのm/z値はどちらも105で同じである。
◆ dについて
d 〇 m/z 105のピークは、両スペクトルとも同じフラグメントイオンのピークである。
m/z 105のピークは、両スペクトルとも
カルボニルのα開裂によって生じたベンゾイル基に由来するピークである。
α開裂については下記のリンク先を参照
カルボニルのα開裂とは
◆ eについて
e 〇 m/z 77のピークは、両スペクトルともベンゼン環に由来するイオンピークである。
m/z 77のピークは、両スペクトルとも
カルボニルのα開裂によって生じたベンゼン環に由来するピークである。