分散系の物理的安定性 87回薬剤師国家試験問170
87回薬剤師国家試験 問170
分散系の物理的安定性に関する記述の正誤について,正しいものはどれか。
a w/o型エマルションの水滴の粒子径は,乳化剤の種類や濃度とは無関係である。
b 親水性の懸濁粒子の表面には,イオンが吸着したり,水和層が形成されたりして,粒子が安定化する。
c イオン性界面活性剤を用いて乳化したとき,電解質が共存すると粒子表面の電気二重層が圧縮されて,分散状態は不安定となる。
d 親水性の高分子コロイドにアルコールを添加すると,コロイドに富む液相と,乏しい液相の2つに分離する。これをコアセルベーションという。
87回薬剤師国家試験 問170 解答解説
◆ aについて
a × w/o型エマルションの水滴の粒子径は,乳化剤の種類や濃度とは無関係である。
乳化剤は界面張力の低下、電気二重層の形成、界面の粘弾性向上などの効果をもたらし、
分散粒子の安定化に寄与する。
これらの効果は乳化剤の種類や濃度により変動する。
よって、w/o型エマルションの水滴の粒子径は,乳化剤の種類や濃度により変化する。
◆ bについて
b 〇 親水性の懸濁粒子の表面には,イオンが吸着したり,水和層が形成されたりして,粒子が安定化する。
親水性の懸濁粒子表面において、イオンが吸着して電気二重層を形成したり、水和層が形成されたりすることで、粒子同士の凝集が抑制され、分散状態が安定化する。
◆ cについて
c 〇 イオン性界面活性剤を用いて乳化したとき,電解質が共存すると粒子表面の電気二重層が圧縮されて,分散状態は不安定となる。
分散粒子表面の電気二重層は、粒子同士の凝集を防ぎ、分散状態の安定化に寄与している。
電解質が共存すると、そのイオンにより分散粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、電気二重層が薄くなり、
粒子間の静電的反発力が弱くなるので、粒子同士が凝集しやすくなり、分散状態は不安定となる。
◆ dについて
d 〇 親水性の高分子コロイドにアルコールを添加すると,コロイドに富む液相と,乏しい液相の2つに分離する。これをコアセルベーションという。
高分子溶液において、
高分子の濃厚な液相と希薄な液相に分離することをコアセルベーションと呼ぶ。
親水性の高分子コロイドにアルコール等の水溶性有機溶媒を添加すると、高分子コロイドの水和水が引き抜かれ、高分子粒子同士が凝集して沈殿する。これはコアセルベーションの1種である。
他、コアセルベーションを起こす手法として、高分子の均一溶液の温度を徐々に下げる、高分子の貧溶媒(相性の悪い溶媒)を加え続ける、塩を添加して塩析を起こすことなどが挙げられる。