ハロゲン化ビニルは求核置換反応(SN1SN2)を受けにくい 89回薬剤師国家試験問6a
89回薬剤師国家試験 問6a
アルケンに関する記述aの正誤を判定してみよう。
a bromoetheneは容易に求核置換反応を受ける。
89回薬剤師国家試験 問6a 解答解説
a × bromoetheneは容易に求核置換反応を受ける。
→ 〇 bromoetheneは求核置換反応を受けにくい。
ハロゲン化物の中でも、bromoethene(CH2=CH−Br)などのハロゲン化ビニルは求核置換反応を受けにくい。
また、ハロゲン化アリール(ハロベンゼン)も求核置換反応を受けにくい。
★ ハロゲン化ビニル(CH2=CH−X)とハロゲン化アリール(Ar−X)では求核置換反応が起こりにくい。
ハロゲン化ビニル(CH2=CH−X)とハロゲン化アリール(Ar−X)のハロゲン−炭素結合は、ハロゲン−sp2炭素の結合である。このことから、ハロゲン化ビニルやハロゲン化アリールで求核置換反応が起こりにくい理由として、以下のことが考えられる。
1つ目は、ハロゲン−sp2炭素の結合は、共鳴により強化され、開裂しにくくなっているので、求核置換反応が起こりにくいことが考えられる。
2つ目は、ハロゲン−sp2炭素の結合は、炭素の正の分極(δ+)が小さいため、求核試薬との反応性が低いことが考えられる。
sp2炭素はsp3炭素に比べて電気陰性度が大きいので、ハロゲン−sp2炭素の結合の分極は、ハロゲン−sp3炭素の結合の分極よりも小さい。
また、ハロゲン−sp2炭素の結合では、ハロゲンの電子供与性共鳴効果が発現し、ハロゲン−sp2炭素の分極を弱める。
これらのことから、ハロゲン−sp2炭素では、炭素の正の分極(Cδ+)は弱いため、求核試薬との反応は起こりにくいと考えられる。
以上のことから、ハロゲン化ビニル(CH2=CH−X)とハロゲン化アリール(Ar−X)では求核置換反応が起こりにくい。