E1反応 反応機構と起こりやすさ・速度の関係
本ページでは、E1反応について説明しています。
★ E1反応はカルボカチオン中間体を経由する二段階の反応である。そのため、E1反応の速度は基質濃度のみに比例する一次反応速度式で記述される。
一分子脱離反応(E1反応)では、第一段階として基質から脱離基が陰イオンとなって外れてカルボカチオン中間体を生成する。第二段階として、C+に隣接する炭素に結合するHが塩基によって引き抜かれ、C=Cが生成する。
E1反応の2つの段階のうち、相対的に活性化エネルギーが高いのは一段階目のカルボカチオン中間体を生成する段階である。よって、この過程がE1の律速段階である。
この反応が一分子脱離反応(E1)と呼ばれる理由は、律速段階で基質の1分子だけが関わるからである。
よって、E1反応の反応速度は基質の濃度のみに比例し、下記の一次反応速度式で記述される。
E1の反応速度=k×[基質]
★ E1反応はカルボカチオン中間体を経由するので、安定なカルボカチオンを生成する基質では進行するが、不安定なカルボカチオンを生成する基質では進行しない。
E1反応の律速段階は、第一段階の脱離基が外れてカルボカチオン中間体を生成する過程である。カルボカチオンとして安定性の高い第3級カルボカチオンやアリルカチオン、ベンジルカチオンが生成する基質ならばE1反応が起こる可能性はあるが、不安定なノーマル第1級カルボカチオンやメチルカチオンが生成する場合はE1反応が起こる可能性は低い。
カルボカチオンの安定性の序列は下記の通りである。
E1反応の律速段階は基質からハロゲンが脱離してカルボカチオンを生成する段階であることから、ハロゲン化アルキルのE1反応の反応性(起こりやすさ)の序列は、ハロゲンが外れて生成するカルボカチオンの安定性の序列に従うので、下記のようになる。
カルボカチオンの安定性については下記のリンク先で解説
カルボカチオンの安定性について
★ 脱離反応では可能な限りC=Cのアルキル置換基の数が多いアルケンが主生成物となる(セイチェフ則,ザイチェフ則)。
セイチェフ則の詳細は下記のリンク先を参照
脱離反応のザイチェフ則(セイチェフ則) 89回問9bd
★ E1反応とSN1反応は競合する。
脱離反応のE1反応と求核置換反応のSN1反応は、
どちらも脱離基が自発的に外れてカルボカチオン中間体を生成する過程が律速段階なので、
E1とSN1は競合する。
SN1反応については下記のリンク先を参照
SN1反応 103回問103