基質の求核置換反応や脱離反応の反応性と脱離基 91回薬剤師国家試験問5c
91回薬剤師国家試験 問5c
ハロアルカンの性質に関する記述cの正誤を判定してみよう。
c フロロアルカンは対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が高い。
91回薬剤師国家試験 問5c 解答解説
c × フロロアルカンは、対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が高い。
→ 〇 フロロアルカンは、対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が低い。
フッ素が基質から脱離して生じるフッ化物イオン(F−)は、
他のハロゲンのアニオンよりも安定性が低い。
よって、フッ素は、他のハロゲンに比べ、相対的に基質から脱離しにくい。
したがって、フロロアルカンは、対応する他のハロアルカンに比べ、求核剤との反応性が低い。
以下、詳細説明
求核置換反応や脱離反応では、基質から脱離基が陰イオンや中性分子となって外れる。
よって、基質の脱離基が外れやすいほど、基質の求核置換反応や脱離反応の反応性は高い。
外れやすい脱離基とは、脱離した後の化学種の安定性が高いものである。
基質から外れた後にアニオン(陰イオン)となる場合は、
アニオンとなった時の負電荷の分散範囲が広く、安定性が高いほど、
脱離基として基質から脱離しやすい。
sp3炭素−ハロゲンの結合を持つ有機ハロゲン化合物は、ハロゲンを脱離基とする求核置換反応や脱離反応の基質となり、反応の進行に伴い、ハロゲンがアニオンとなって外れる。
ハロゲンアニオンの負電荷の分散範囲が広く、安定性が高いほど、
基質からハロゲンがアニオンとなって脱離しやすく、
求核置換反応や脱離反応の反応性は高くなる。
ハロゲンアニオンの安定性の比較について、
F−< Cl−< Br−< I− とハロゲンの半径が大きくなるにつれ、
負電荷の分散する範囲が広がるので、安定性が高くなる。
よって、F< Cl< Br< I とハロゲンが大きくなるにつれ、
脱離基として基質から脱離しやすくなる。
以上のことから、
有機ハロゲン化合物について、
F< Cl< Br< I とハロゲンが大きくなるにつれ、
基質からハロゲンが脱離しやすくなるので、
求核置換反応や脱離反応の反応性は高くなる。
なお、ハロゲン化水素の酸性度の序列についても、
ハロゲンアニオンのの安定性で説明される。
詳細は下記のリンク先を参照
ハロゲン化水素の酸性度と共役塩基の安定性