界面活性剤に関する記述 100回薬剤師国家試験問174
100回薬剤師国家試験 問174
界面活性剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 イオン性界面活性剤において、アルキル鎖が長くなるほどクラフト点は低くなる。
2 親水性親油性バランス(HLB)値が小さい界面活性剤ほど、疎水性が高い。
3 HLB 値が3.7の界面活性剤2g と、HLB 値が11.5の界面活性剤1gを混合して得た界面活性剤のHLB 値は、7.6である。
4 イオン性界面活性剤水溶液のモル電気伝導率は、臨界ミセル濃度以上で急激に減少する。
5 臨界ミセル濃度以上では、界面活性剤分子はミセルを形成するため、単分子として溶解しているものはない。
100回薬剤師国家試験 問174 解答解説
◆ 1について
1 × イオン性界面活性剤において、アルキル鎖が長くなるほどクラフト点は低くなる。
→ 〇 イオン性界面活性剤において、アルキル鎖が長くなるほどクラフト点は高くなる。
イオン性界面活性剤は、ある温度以上で水への溶解度が急激に上昇する。この温度をクラフト点と呼ぶ。
イオン性界面活性剤の疎水性基であるアルキル鎖の炭素数が増加すると、
界面活性剤の疎水性は大きくなり、
クラフト点は高くなる。
なお、イオン性界面活性剤のクラフト点について、
温度がクラフト点になると、イオン性界面活性剤はミセルを形成し始め、温度上昇と共に水への溶解度が急激に上昇するようになる。
よって、クラフト点はイオン性界面活性剤のミセル形成の始まる最低温度であるといえる。
◆ 2について
2 〇 親水性親油性バランス(HLB)値が小さい界面活性剤ほど、疎水性が高い。
Hydrophile-Lipophile Balance(HLB:親水親油バランス)とは、エマルションの乳化剤として用いられる非イオン性界面活性剤の親水性基と疎水性基のバランスを表す尺度である。
HLBが大きいほど界面活性剤の親水性が高く、
HLBが小さいほど界面活性剤の親油性(疎水性)が高いことを示す。
大まかな基準として、
HLB値が7以上のものは親水性であり、
HLB値が7未満のものは親油性(疎水性)であると考えられる。
◆ 3について
3 × HLB 値が3.7の界面活性剤2g と、HLB 値が11.5の界面活性剤1gを混合して得た界面活性剤のHLB 値は、7.6である。
→ 〇 HLB 値が3.7の界面活性剤2g と、HLB 値が11.5の界面活性剤1gを混合して得た界面活性剤のHLB 値は、6.3である。
界面活性剤AとBの混合物のHLB(HLBAB)について次式が成り立つ。
本問では、上式を用いてHLB 値が3.7の界面活性剤2g と、HLB 値が11.5の界面活性剤1gを混合して得た界面活性剤のHLB 値を求める。
◆ 4について
4 〇 イオン性界面活性剤水溶液のモル電気伝導率は、臨界ミセル濃度以上で急激に減少する。
詳細は下記のリンク先を参照
界面活性剤水溶液の電気の当量伝導度 97回問175の2
◆ 5について
5 × 臨界ミセル濃度以上では、界面活性剤分子はミセルを形成するため、単分子として溶解しているものはない。
臨界ミセル濃度(cmc)以上では、界面活性剤分子はミセルの他、モノマー(単分子)やミセル以外の会合体としても存在する。
溶液の界面活性剤濃度の上昇に対する界面活性剤分子の動向および表面張力の推移は下記の通り。
★ 他サイトさんの解説リンク
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