界面活性剤溶液の表面張力と浸透圧 88回薬剤師国家試験問170

88回薬剤師国家試験 問170
次の図は、ある界面活性剤の希薄溶液の表面張力と浸透圧を測定し、溶液濃度の関数としてプロットしたものである。記述a〜eの正誤について、正しいものはどれか。

 

界面活性剤溶液の表面張力と浸透圧 88回薬剤師国家試験問170

 

a @は浸透圧、Aは表面張力のプロットである。
b これらのプロットがほぼ同じ濃度で折れ曲がりを生じるのは、界面活性剤が重合するためである。
c 図中の折れ曲がりを示す濃度を臨界ミセル濃度という。
d ミセルの形成は、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤で起こり、非イオン性の界面活性剤では起こらない。
e ミセルの形成は、水溶液中で起こり、非極性溶媒中では起こらない。

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88回薬剤師国家試験 問170 解答解説

 

界面活性剤溶液の表面張力と浸透圧 88回薬剤師国家試験問170

 

a × @は浸透圧、Aは表面張力のプロットである。
→ 〇 @は表面張力、Aは浸透圧のプロットである。

 

b × これらのプロットがほぼ同じ濃度で折れ曲がりを生じるのは、界面活性剤が重合するためである。
→ 〇 これらのプロットがほぼ同じ濃度で折れ曲がりを生じるのは、界面活性剤が会合するためである。

 

c 〇 図中の折れ曲がりを示す濃度を臨界ミセル濃度という。

 

界面活性剤分子同士が疎水性基を向け合って会合した集合体をミセルと呼ぶ。
ミセルの外側は親水性基、内側は疎水性基で構成されている。
ミセル形成の始まる界面活性剤の濃度域を臨界ミセル濃度(cmc)と呼ぶ

 

界面活性剤溶液の表面張力と浸透圧 88回薬剤師国家試験問170

 

 

・界面活性剤溶液の表面張力について
界面活性剤水溶液の表面張力について、
臨界ミセル濃度(cmc)までは界面活性剤濃度の上昇に対して表面張力は急激に低下し、
臨界ミセル濃度以上ではほぼ一定となる。
関連問題
界面活性剤水溶液の濃度と表面張力 99回問175の2

 

・界面活性剤溶液の浸透圧について
溶液の浸透圧は束一的性質の1つであり、
溶質の粒子数で決まるため、
界面活性剤分子がミセルを形成し始めると、
界面活性剤の濃度上昇に対する浸透圧の上昇は鈍化する。

 

界面活性剤水溶液の各物理化学的性質の濃度に対する推移は下記の通り。

 

界面活性剤溶液の表面張力と浸透圧 88回薬剤師国家試験問170

 

 

◆ dについて
d × ミセルの形成は、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤で起こり、非イオン性の界面活性剤では起こらない。

 

ミセルの形成は、イオン性界面活性剤でも非イオン性の界面活性剤でも起こる。

 

 

◆ eについて
e × ミセルの形成は、水溶液中で起こり、非極性溶媒中では起こらない。

 

水溶液中(極性溶媒中)でのミセル形成では、界面活性剤同士が親水性基を外側、疎水性基を内側に向けて会合したミセルとなる。
一方、非極性溶媒中でのミセル形成では、界面活性剤同士が疎水性基を外側、親水性基を内側に向けて会合した逆ミセルとなる。

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