91回薬剤師国家試験問170 界面活性剤に関する記述
91回薬剤師国家試験 問170
界面活性剤に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a イオン性界面活性剤水溶液では、クラフト点以上になるとミセルが形成されない。
b 非イオン性界面活性剤水溶液では、曇点以上になると2相分離が起こり、溶液は白濁する。
c Hydrophile-Lipophile Balance(HLB)が大きい界面活性剤ほど親油性である。
d ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、非イオン性界面活性剤に分類される。
91回薬剤師国家試験 問170 解答解説
◆ aについて
a × イオン性界面活性剤水溶液では、クラフト点以上になるとミセルが形成されない。
→ 〇 イオン性界面活性剤水溶液では、温度がクラフト点以上にならないとミセルが形成されない。
イオン性界面活性剤は、ある温度以上で水への溶解度が急激に上昇する。この温度をクラフト点と呼ぶ。
温度がクラフト点になると、イオン性界面活性剤はミセルを形成し始め、温度上昇と共に水への溶解度が急激に上昇するようになる。
このことから、イオン性界面活性剤水溶液では、温度がクラフト点以上にならないとミセルが形成されないともいえる。
◆ bについて
b 〇 非イオン性界面活性剤水溶液では、曇点以上になると2相分離が起こり、溶液は白濁する。
非イオン性界面活性剤は、ある温度以上で水への溶解度が急激に低下する。この温度を曇点と呼ぶ。
非イオン性界面活性剤水溶液において、温度の上昇により水分子の熱運動が激しくなると、非イオン性界面活性剤分子と水分子との水素結合が切断され、親水性基の脱水和が起こり、ミセルの会合数が急増し、溶解度が低下すると考えられている。
よって、曇点以上の温度では、溶けきれなくなった非イオン性界面活性剤の相分離が起こり、溶液は白濁する。
◆ cについて
c × Hydrophile-Lipophile Balance(HLB)が大きい界面活性剤ほど親油性である。
→ 〇 Hydrophile-Lipophile Balance(HLB)が大きい界面活性剤ほど親水性であり、HLBが小さい界面活性剤ほど親油性(疎水性)である。
詳細は下記のリンク先を参照
界面活性剤のHLBと親水性・親油性 91回問170c
◆ dについて
d 〇 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、非イオン性界面活性剤に分類される。
下記はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート,Tween系)の一般的な構造である。
非イオン性界面活性剤については下記のリンク先を参照
非イオン性界面活性剤の種類と例
ポリオキシエチレンソルビタンとは、
ソルビタンにポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール:−O−(CH2CH2O)n)が置換した構造であり、
その脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:ポリソルベート,Tween系)は非イオン性界面活性剤である。
下記はその代表例のポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(ポリソルベート80)の構造である。