界面活性剤の性質に関する記述 94回薬剤師国家試験問171
94回薬剤師国家試験 問171
界面活性剤の性質に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a ソルビタンモノラウレートのHLB ( hydrophile-lipophile balance) 値は、ソルビタンモノステアレートのHLB値に比べて小さい。
b アルキル硫酸ナトリウムの直鎖アルキル基 (C10H21 〜 C18H37) の炭素数が増加すると、クラフト点は低くなる。
c ドデシル硫酸ナトリウム水溶液の当量電気伝導度は、ある濃度以上で急激に低下する。
d ポリオキシエチレン p-ノニルフェニルエーテルのオキシエチレン基の付加モル数が増加すると、臨界ミセル濃度は高くなる。
94回薬剤師国家試験 問171 解答解説
◆ aについて
a × ソルビタンモノラウレートのHLB ( hydrophile-lipophile balance) 値は、ソルビタンモノステアレートのHLB値に比べて小さい。
→ 〇 ソルビタンモノラウレートのHLB ( hydrophile-lipophile balance) 値は、ソルビタンモノステアレートのHLB値に比べて大きい。
詳細は下記のリンク先を参照
ソルビタンモノラウレートとソルビタンモノステアレートのHLB 94回問171a
◆ bについて
b × アルキル硫酸ナトリウムの直鎖アルキル基 (C10H21_C18H37) の炭素数が増加すると、クラフト点は低くなる。
→ 〇 アルキル硫酸ナトリウムの直鎖アルキル基 (C10H21_C18H37) の炭素数が増加すると、クラフト点は高くなる。
アルキル硫酸ナトリウム(R-OSO3−Na+)は陰イオン界面活性剤である。
イオン性界面活性剤は、ある温度以上で水への溶解度が急激に上昇する。この温度をクラフト点と呼ぶ。
イオン性界面活性剤の疎水性基の炭素数が増加すると、
界面活性剤の疎水性は大きくなり、
クラフト点は高くなる。
◆ cについて
c 〇 ドデシル硫酸ナトリウム水溶液の当量電気伝導度は、ある濃度以上で急激に低下する。
界面活性剤水溶液の当量電気伝導度(モル伝導率)は、
臨界ミセル濃度(cmc)以上で急激に低下する。
詳細は下記のリンク先を参照
界面活性剤水溶液の電気の当量伝導度 97回問175の2
◆ dについて
d 〇 ポリオキシエチレン p-ノニルフェニルエーテルのオキシエチレン基の付加モル数が増加すると、臨界ミセル濃度は高くなる。
ポリオキシエチレン p-ノニルフェニルエーテルは非イオン性界面活性剤であり、
構造式は下記の通り。
CH3(CH2)8−Ph−O−(CH2CH2O)n−H (Phはフェニル基)
非イオン性界面活性剤が有する親水性基の1種としてポリオキシエチレン基がある。
ポリオキシエチレン基とは、下記のようにエチレングリコールが重合した構造(ポリエチレングリコール構造,マクロゴール構造)である。
−O−(CH2CH2O)n−
よって、非イオン性界面活性剤の親水性基であるオキシエチレン基(−CH2CH2O)の付加モル数が増加すると、界面活性剤の親水性は高くなり、ミセルを形成しにくくなり、臨界ミセル濃度(cmc)は高くなると考えられる。