薬物の経肺吸収に関する記述 91回薬剤師国家試験問153
91回薬剤師国家試験 問153
薬物の経肺吸収に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a 肺胞の上皮細胞層は薄く、他の投与経路に比べて高分子薬物が吸収されやすい。
b 肺からの低分子薬物の吸収は基本的にはpH分配仮説に従い、受動拡散で吸収される。
c 全身作用を目的とした投与剤形はエアゾール剤に限られる。
d 薬物粒子を肺胞に効率よく沈着させて吸収させるためには、粒子径を0.5μm以下にする必要がある。
91回薬剤師国家試験 問153 解答解説
◆ a,bについて
a ○ 肺胞の上皮細胞層は薄く、他の投与経路に比べて高分子薬物が吸収されやすい。
b ○ 肺からの低分子薬物の吸収は基本的にはpH分配仮説に従い、受動拡散で吸収される。
肺胞腔と毛細血管の間には、一部を除き、
扁平な一層のT型肺胞上皮細胞が存在しているだけであり、
上皮細胞の厚さは1μm以下である。
小腸上皮細胞の厚さは40μmであるので、
肺胞上皮細胞はきわめて薄く、水溶性薬物及び高分子化合物の透過性が高い。
◆ cについて
c × 全身作用を目的とした投与剤形はエアゾール剤に限られる。
全身作用を目的とした投与剤形は、エアゾール剤以外に、
吸入粉末剤や吸入液剤もある。
◆ dについて
d × 薬物粒子を肺胞に効率よく沈着させて吸収させるためには、粒子径を0.5μm以下にする必要がある。
薬物の粒子径が10μm以上だと、上気道で捕捉されやすく、下気道には到達しにくい。
薬物の粒子径が0.5〜1μmだと、気道の一番奥の肺胞に到達し、沈着する。
薬物の粒子径が0.5μm以下だと、吸入して肺深部に到達しても、沈着せずに呼気中に排出されてしまう。
そのため、吸入剤では、薬物粒子が効率よく目的部位の気管支または肺に到着し、かつ、沈着できるよう、空気力学径が0.5〜7μmになるよう設計されている。