106回薬剤師国家試験問178 結晶多形の溶解熱・転移熱・転移温度
106回薬剤師国家試験 問178
図は結晶多形をもつ薬物Aについて15 〜 35 ℃におけるリン酸緩衝液中の溶解度(S)の対数値を絶対温度(T)の逆数に対してプロットしたものである。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。ただし、Aの溶解熱は測定温度範囲において一定とする。
1 図よりT形からU形への転移熱を知ることはできない。
2 薬物AのU形からT形への転移温度は約84 ℃である。
3 図中のTrは、T形結晶の分解開始温度である。
4 T形及びU形の結晶とも溶解熱は負の値を示す。
5 Tr以上の温度になると、T形結晶の方がU形結晶より高い溶解度を示すことが予測される。
106回薬剤師国家試験 問178 解答解説
溶解度Sと絶対温度Tの関係式として、次の@式が成り立つ。
A式より、温度に対して溶解熱僣が一定の場合、
温度の逆数(1/T)に対して溶解度の常用対数(log10 S)をプロットすると(ファントホッフプロットと呼ぶ)、
傾き−僣/2.303Rの直線が得られることになる。
◆ 1について
1 × 図よりT形からU形への転移熱を知ることはできない。
T形からU形への転移熱(僣 転移TU)は、T形とU形の溶解熱の差に等しい。
僣 転移TU = 僣U−僣T
T形とU形の溶解熱(僣T,僣U)はファントホッフプロットの直線の傾きから求めることができるので、図よりT形からU形への転移熱を知ることはできる。
◆ 2,3について
2 〇 薬物AのU形からT形への転移温度は約84 ℃である。
3 × 図中のTrは、T形結晶の分解開始温度である。
→ 〇 図中のTrは、T形⇔U形の転移温度である。
薬物AのT形⇔U形の転移温度(T転移)は、図のT形とU形の直線の交点の温度(Tr)である。
図より、T転移について次式が成り立つ。
1/T転移×10 3 K−1 = 2.8
T転移について解くと、
T転移 ≒ 357 K
したがって、
薬物AのU形からT形への転移温度は約84 ℃であるといえる。
◆ 4について
4 × T形及びU形の結晶とも溶解熱は負の値を示す。
→ 〇 T形及びU形の結晶とも溶解熱は正の値を示す。
図の直線について、
傾き = −僣/2.303 R
である。
図のT形、U形の直線の傾きはいずれも負であるため、
T形、U形の溶解熱(凾g)は正の値である。
◆ 5について
5 〇 Tr以上の温度になると、T形結晶の方がU形結晶より高い溶解度を示すことが予測される。
図より、
Trよりの高温ではT形結晶の方がU形結晶より高い溶解度を示し、
Trよりの低温ではU形結晶の方がT形結晶より高い溶解度を示す。
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