グルコース生成の熱化学方程式 89回薬剤師国家試験問18
89回薬剤師国家試験 問18
化学反応に伴い熱の発生、吸収が起こる。例えば、標準状態(1 bar, 25 ℃)におけるグルコース生成の熱化学方程式は、次式で表せる。
僣°は標準状態のエンタルピー変化であり、(s)は固体、(g)は気体状態を示す。
次の記述のうち、正しいものはどれか。
a 僣°は標準状態の熱量変化を示し、式(1)では1,274 kJ・mol−1の吸熱があることを示す。
b グルコース生成反応は、エントロピー駆動の反応である。
c 標準状態における1モルの化合物を生成させる反応のエンタルピー変化を標準生成エンタルピー変化という。
d 式(1)の僣°は、グルコース(s)、炭素(s)、水素(g)の燃焼熱から求まる。
e エンタルピーは状態量であるから、反応の経路によらない。すなわち、どんな中間反応が起こってもエンタルピー変化は同じであり、この原理をヘス(Hess)の法則という。
89回薬剤師国家試験 問18 解答解説
◆ aについて
a × 僣°は標準状態の熱量変化を示し、式(1)では1,274 kJ・mol−1の吸熱があることを示す。
→ 〇 僣°は標準状態の熱量変化を示し、式(1)では1,274 kJ・mol−1の発熱があることを示す。
系の状態変化とエンタルピー変化(僣)の符号の関係は下記の通り。
系のエネルギーが減少する場合(発熱):僣<0
系のエネルギーが増加する場合(吸熱):僣>0
式(1)より、標準反応エンタルピー(决 H°)は負の値なので、
この化学反応は発熱反応である。
エンタルピーの詳細は下記のリンク先を参照
エンタルピーの定義と変化量の意味
◆ bについて
b × グルコース生成反応は、エントロピー駆動の反応である。
→ 〇 グルコース生成反応は、エンタルピー駆動の反応である。
式(1)の標準反応エンタルピー(决 H°)は大きな負の値であることから、
グルコース生成反応は、僣が大きな負の値であることが要因で僭<0が達成される、エンタルピー駆動の反応だと考えられる。
エンタルピー駆動とエントロピー駆動については
下記のリンク先を参照
エンタルピー駆動・エントロピー駆動とは
◆ cについて
c 〇 標準状態における1モルの化合物を生成させる反応のエンタルピー変化を標準生成エンタルピー変化という。
化合物の標準生成エンタルピー(冉 H゜)とは、
標準状態下、最も安定な単体から化合物1molを生成する反応のエンタルピー変化である。
式(1)について、
式(1)の標準反応エンタルピー(决 H°=1,274 kJ・mol−1)は、
標準状態下、
1molのグルコースを最も安定な単位から生成する反応のエンタルピー変化なので、
グルコースの標準生成エンタルピー変化(冉 H゜)といえる。
なお、H2(気体)やO2(気体)など最も安定な単体の標準生成エンタルピーは0である。
◆ d,eについて
d 〇 式(1)の僣°は、グルコース(s)、炭素(s)、水素(g)の燃焼熱から求まる。
e 〇 エンタルピーは状態量であるから、反応の経路によらない。すなわち、どんな中間反応が起こってもエンタルピー変化は同じであり、この原理をヘス(Hess)の法則という。
詳細は下記のリンク先を参照
ヘスの法則 89回問18de