可逆過程と不可逆過程の状態関数の変化量と仕事・熱 107回薬剤師国家試験問93の5
107回薬剤師国家試験 問93の5
状態関数に関する次の記述の正誤を判定してみよう。
5 状態関数の変化量は、可逆過程でも不可逆過程でも等しい。
107回薬剤師国家試験 問93の5 解答解説
5 〇 状態関数の変化量は、可逆過程でも不可逆過程でも等しい。
状態関数の変化量は、
系の始状態と終状態だけで決まり、
系が変化する際の経路や過程に依存しない。
一方、経路関数である熱と仕事は、
系が変化する際の経路や過程によって値が異なる。
理想気体の膨張を例に、
状態関数の内部エネルギーと
経路関数の熱・仕事について、
不可逆過程と可逆過程とで比較する。
温度はT1で一定の下、
理想気体が状態A(VA,pA)から
状態B(VB,pB)へ膨張したとする。
理想気体の内部エネルギーは温度のみによって決まるので、
温度が同じなら内部エネルギーも同じである
(温度一定なら、内部エネルギー変化量は0)。
よって、等温曲線上のどの点でも、
温度はT1,内部エネルギーはU1で等しい。
内部エネルギーは状態関数であり、
その変化量(儷)は系の始状態と終状態だけで決まるため、
状態Aから状態Bへの変化について、
可逆過程でも不可逆過程でも儷=0で等しい。
しかし、状態AからBへの変化であっても、
経路関数である仕事・熱は、
可逆過程の方が不可逆過程よりも大きく、
経路・過程によって差が生じている。
現実で起こる変化は全て不可逆過程であるが、
変化をゆっくりと長い時間かけて起こるようにすると、
可逆過程の様相に近づけることはできる。