108回薬剤師国家試験問92 エントロピーに関する記述
108回薬剤師国家試験 問92
エントロピーに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 エントロピー変化儡 は、可逆的に出入りする熱をqrev、そのときの温度をTとすると、儡 = qrev/T で与えられる。
2 エントロピーの最小値は熱力学第3法則によってゼロと定められる。
3 系と外界(周囲)のエントロピー変化の和が正になる方向に、すべての変化は進行する。
4 エントロピーは系の乱雑さを定量的に表す熱力学量である。
5 外界(周囲)のエントロピー変化を温度で割った熱力学量が、系のギブズエネルギー変化である。
108回薬剤師国家試験 問92 解答解説
◆ 1,4について
1 〇 エントロピー変化儡 は、可逆的に出入りする熱をqrev、そのときの温度をTとすると、
儡 = qrev/T で与えられる。
4 〇 エントロピーは系の乱雑さを定量的に表す熱力学量である。
エントロピー(S)とは、系の乱雑さを定量的に表す熱力学量であり、示量性状態関数の1つである。
エントロピー変化儡は次の式で定義される。
◆ 2について
2 〇 エントロピーの最小値は熱力学第3法則によってゼロと定められる。
熱力学第3法則では、完全結晶においては、絶対零度(0K)でエントロピーは0とする。
原子や分子の熱運動が激しいほど、乱雑さは大きくなり、エントロピーは高くなる。
温度が低くなるほど、熱運動は小さくなり、エントロピーは低くなる。
そして、絶対零度(0K)では、熱運動は無くなり、完全結晶ではすべての原子は結晶格子の一定の位置に納まり、
乱雑さは無くなり、エントロピーは0になると考えられる。
上記について、熱力学第三法則では、「純物質の完全結晶(配列の乱れがない理想的な結晶)のエントロピーは、絶対零度(0K)ではゼロである」と表現する。
ただし、現実には絶対零度には到達できない。
また、絶対零度でもエントロピーは0にならない場合がある(T=0KでS>0)。
この時のエントロピーを残余エントロピーと呼ぶ。
◆ 3について
3 〇 系と外界(周囲)のエントロピー変化の和が正になる方向に、すべての変化は進行する。
熱力学第2法則は、
自発的な変化は孤立系(宇宙)のエントロピーが増大する方向に進むことを示す。
これをエントロピー変化(儡)を用いて表すと、
自発的な変化は儡宇宙>0の方向に進むといえる。
宇宙のエントロピー変化(儡宇宙>)は、
系のエントロピー変化(儡系)と外界のエントロピー変化(儡外界)の和に等しいので、
自発的な変化は儡系+儡外界>0の方向に進むといえる。
◆ 5について
5 × 外界(周囲)のエントロピー変化を温度で割った熱力学量が、系のギブズエネルギー変化である。
外界(周囲)のエントロピー変化を温度で割った熱力学量は、系のギブズエネルギー変化にはならない。
ギブスエネルギー(G)の定義式
G = H − T・S
より、
定温定圧条件において、
ギブズエネルギー変化(僭)は次式で表される。
僭 = 僣 − T・儡
関連問題
ギブスエネルギー変化と自発的な反応の方向・平衡 94回問18a
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