薬物の消化管吸収と胃内容物排出速度 91回薬剤師国家試験問152
91回薬剤師国家試験 問152
薬物の消化管吸収と胃内容物排出速度に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a イミプラミン塩酸塩は胃内容物排出速度を増加させるので、併用した薬物の吸収速度は大きくなる。
b プロパンテリン臭化物は胃内容物排出速度を減少させるので、アセトアミノフェンの吸収速度は小さくなる。
c 食物摂取により胃内容物排出速度が増加し、セファクロルの吸収速度は小さくなる。
d 食物摂取により胃内容物排出速度が減少し、リボフラビンの吸収量は増加する。
91回薬剤師国家試験 問152 解答解説
◆ aについて
a × イミプラミン塩酸塩は胃内容物排出速度を増加させるので、併用した薬物の吸収速度は大きくなる。
イミプラミン塩酸塩は三環系抗うつ薬であり、抗コリン作用を有するので、
消化管運動を抑制し、胃内容排出速度を低下させる。
小腸で単純拡散により吸収される薬物は、抗コリン薬の併用により、
胃内容排出速度が低下すると、吸収速度が低下し、
最高血中濃度到達時間の延長や最高血中濃度の低下を引き起こす。
一方で、小腸のトランスポーターを介して吸収される薬物の場合、
抗コリン薬により胃内容排出速度が低下すると、薬物が少しずつ小腸に輸送されることで、
トランスポーターが飽和しにくくなるので、吸収量が増大する。
◆ bについて
b ○ プロパンテリン臭化物は胃内容物排出速度を減少させるので、アセトアミノフェンの吸収速度は小さくなる。
プロパンテリン臭化物は、抗コリン薬であるので、
消化管運動を抑制し、胃内容物排出速度を低下させる。
アセトアミノフェンは、小腸で単純拡散により吸収されるので、
プロパンテリン臭化物の作用で胃内容物排出速度が低下すると、
吸収速度は小さくなる。
◆ cについて
c × 食物摂取により胃内容物排出速度が増加し、セファクロルの吸収速度は小さくなる。
食物摂取により、胃内容物排出速度は低下する。
セファクロル(ケフラール)は、小腸で単純拡散により吸収される薬物であるので、
食事により胃内容排出速度が低下すると、吸収速度は小さくなる。
◆ dについて
d ○ 食物摂取により胃内容物排出速度が減少し、リボフラビンの吸収量は増加する。
リボフラビン(ビタミンB2)は、小腸の担体を介して吸収される。
食物摂取により胃内容排出速度が低下すると、リボフラビンが少しずつ小腸に輸送され、
担体が飽和しにくくなるので、吸収量が増大する。