オメプラゾールはイオウ原子上に不斉中心を持つ 100回薬剤師国家試験問207の1
100回薬剤師国家試験 問207の1
オメプラゾールの構造に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。
1 オメプラゾールはイオウ原子上に不斉中心を持つ。
100回薬剤師国家試験 問207の1 解答解説
1 ○ オメプラゾールはイオウ原子上に不斉中心を持つ。
R1−S(=O)−R2の構造をスルホキシドと呼ぶ。
スルホキシドは下記のように共鳴する。
実際には、主に右側の、酸素原子が負に分極し、硫黄原子が正に分極している構造となっている。これは、負電荷が電気陰性度の相対的に大きい酸素原子上にある方がより安定なためである。
スルホキシドには、下記のように硫黄原子を不斉中心とした立体異性体が存在する(下記はR1>R2の場合)。なお、順位則において、非共有電子対(ローンペア)は原子番号0とみなすため、優先順位は最も低い。
オメプラゾールはラセミ体であるが、そのR体とS体の構造は下記の通り。
オメプラゾールのS体はエソメプラゾール(ネキシウム)として、ラセミ体のオメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン)とは別に販売されている。
オメプラゾールのR体とS体を比較すると、薬理活性に差はないが、代謝酵素による代謝に差がある。
R体は、代謝酵素の個人差により血中濃度が早く低下してしまうことがある。
一方、S体は代謝酵素の個人差が小さく、血中濃度の個人差が小さい。
よって、エソメプラゾール(S体のみ)はオメプラゾール(R体とS体のラセミ体)と比較して、薬物動態及び薬力学作用の個体間変動が小さい。
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第100回問206,207(e-RECさん)