光学活性体aの還元生成物の2種の異性体 84回薬剤師国家試験問4
第84回薬剤師国家試験 問4
次の実験結果に関する記述イ）、ロ）及び立体配置の表示ハ）の正誤を判定してみよう。
Fischer投影式で示した光学活性体aを還元したところ、2種の異性体 b及び cが1：4の比で得られた。c はL-tartaric acidと同一であった。
イ）b と c の比旋光度は同じである。
ロ）生成物（bとc）の比旋光度はL-tartaric acid（c）の比旋光度の80 ％である。
ハ）L-tartaric acid（c）の2つのキラル炭素の立体配置のR、S 表示は（2S，3S）である。
第84回薬剤師国家試験 問4 解答解説
◆ イ）× b と c の比旋光度は同じである。
bは2つの不斉炭素の間に対称面が描かれるのでメソ化合物（メソ体）である。
メソ体では、不斉中心があっても対称面で分かれる互いにエナンチオマーの2つの対象構造同士が、互いに相手の光学活性を分子内で打ち消し合うことになる。よって、メソ体は光学活性を示さない。メソ化合物は旋光性を示さないので、bは旋光性を示さず、比旋光度は0である。
一方、cは2つの不斉炭素を持つが対称面がないのでメソ化合物ではない。よって、cは旋光性を示す。
したがって、bとcの比旋光度は異なる。
★参考外部サイトリンク
旋光度測定と比旋光度（薬学これでOKさん）
◆ ロについて
ロ）〇 生成物（bとc）の比旋光度はL-tartaric acid（c）の比旋光度の80 ％である。
比旋光度の値はその単位からして、100cm3の光学不活性な溶媒に試料を1g溶かした時の値を示す。
bはメソ化合物なので比旋光度は0である。
cは不斉炭素を持ち、かつ、メソ化合物ではないので旋光性を示す。cの比旋光度を仮にX°と置く。
問題文によると、aの還元反応により、生成物としてbとcが1：4の割合、つまりaが20％ cが80％含まれた混合物が生成している。
下記は1gのaを還元した時の生成物と旋光の様子を示す。
よって、設問の反応の生成物(b：c＝1：4の混合物)の比旋光度はcの比旋光度の80％（0.8X°）である。
◆ ハについて
ハ）× L-tartaric acid（c）の2つのキラル炭素の立体配置のR、S 表示は（2S，3S）である。
→ 〇 L-tartaric acid（c）の2つのキラル炭素の立体配置のR、S 表示は（2R，3R）である。
不斉中心の絶対配置の判別の仕方については、下記のリンク先を参照
不斉中心の絶対配置の判別について
フィッシャー投影式では、左右の線は紙面から手前に伸びる結合を示し、端の上下の線は紙面から奥側に伸びる結合を示し、端以外の上下の線は紙面上を伸びる結合を示す。
・cの絶対配置について
2位の炭素の立体
④のHが紙面から手前側にあり、①②③が左回り反時計回りに並んでいるのでRである。よって、2R
3位の炭素の立体
④のHが紙面から手前側にあり、①②③が左回り反時計回りに並んでいるのでRである。よって、3R
以上より、
cの絶対配置は2R3Rである。
・bの絶対配置について
2の炭素の立体
④のHが紙面から手前側にあり、①②③が左回り反時計回りに並んでいるのでRである。よって、2R
3の炭素の立体
④のHが紙面から手前側にあり、①②③が右回り時計回りに並んでいるのでRである。よって、3S
以上より、
bの絶対配置は2R3Sである。
★参考外部サイトリンク
R,S 絶対配置（生命系のための理工学基礎さん）