橋構造と立体異性体(光学活性体)の数 85回薬剤師国家試験問6
第85回薬剤師国家試験 問6
次の化合物のうち、不斉炭素を2個有し、かつ立体異性体(光学活性体)の数が2であるものはどれか。
全て答えなさい。
第85回薬剤師国家試験 問6 解答解説
3は不斉炭素を2個有し、かつ立体異性体(光学活性体)の数が2である。
以下、詳細
基本的に、ある化合物に不斉中心がn個あるとすると、その化合物を含め互いに立体異性体であるものの数は、各不斉炭素についてR,Sの二通りの立体があることから全部で(2のn乗)個あるはずである。
ただし、例外的に、不斉中心の数がn個でも、立体異性体の数が(2のn乗)個とならないこととして、次の(1)と(2)のことが挙げられる。
(1)立体異性体の中に分子内対称面のあるものが含まれる
例として、2,3-dibromobutaneは2個の不斉炭素を有するが、その立体異性体の中には分子内対称面を持つものがある。
不斉炭素(キラル中心)を有するが、分子内対称面を持つものをメソ体と呼ぶ。メソ体は光学活性を示さない。
2,3-dibromobutaneの立体異性体は下記の通り。
上記のうち、(2S,3R)と(2R,3S)のものは分子内対称面をもち、これらは同一化合物であり、メソ体である。
よって、2,3-dibromobutane は2個の不斉炭素を有するが、立体配置異性体の数は3個、光学活性体の数は2個である。
(2)橋頭位が両方とも不斉中心である
環に橋がかかったような構造があり、橋のたもと(橋頭位)の原子が両方とも不斉中心という構造が1つあるごとに、立体配置異性体の数が半分になる。これは、橋構造が出来るようにすると、2つの橋頭位の絶対配置の組み合わせが制約されるためである(橋構造を作れない橋頭位の絶対配置の組み合わせがある)。
不斉中心の数がn個で、橋頭位の原子が両方とも不斉中心という構造がm個あるとすると、
その化合物の立体配置異性体の数は(n−m)の2乗個となる。
以上を踏まえて設問の1〜4の立体異性体の数を見ていく。
◆ 1について
不斉中心は2個で、分子内対称面はなく、橋頭位が両方とも不斉中心である構造もないので、立体異性体の数は(2の2乗)個=4個である。
◆ 2について
不斉中心は4個で、分子内対称面はないが、橋頭位が両方とも不斉中心の構造が1つあるので、
立体異性体の数は(2の[4−1])乗個=(2の3乗)個=8個である。
◆ 3について
不斉中心は2個で、分子内対称面はないが、橋頭位が両方とも不斉中心である構造が1つあるので、
立体異性体の数は(2の[2−1])乗個=(2の1乗)個=2個である。
◆ 4について
不斉中心は1個で、分子内対称面はなく、橋頭位が両方とも不斉中心である構造もないので、立体異性体の数は2個である。
◆ 5について
不斉中心は3個で、分子内対称面はなく、橋頭位が両方とも不斉中心である構造もないので、立体異性体の数は(2の3乗)個=8個である。