炭素原子を含む反応活性種 第94回薬剤師国家試験問5

第94回薬剤師国家試験 問5
炭素原子を含む反応活性種に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

a カルボカチオンの安定性は、第三級、第二級、第一級の順に増す。

 

b ベンジルアニオンは、メチルアニオンより安定である。

 

c カルボアニオンは、隣接炭素原子上に電子求引基が存在すると、より不安定となる。

 

d ラジカル反応は、ラジカル捕捉剤により促進される。

 

e クロロホルムを強塩基で処理すると、ジクロロカルベンが生成する。

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第94回薬剤師国家試験 問5 解答解説

 

◆ aについて
a × カルボカチオンの安定性は、第三級、第二級、第一級の順に増す。
→ 〇 カルボカチオンの安定性は、第一級、第二級、第三級の順に増す。

 

カルボカチオン(C+)は空の電子軌道を有する電子不足な状態であるため、電子供与基であるアルキル基が多く結合するほど安定性が高くなる。

 

炭素原子を含む反応活性種 第94回薬剤師国家試験問5

 

カルボカチオンの安定性については、
下記のリンク先を参照
カルボカチオンの安定性

 

また、ラジカルは不対電子が1つ浮いている不安定な状態であり、電子を1つ得て不対電子を電子対にしたいため、電子不足な状態である。
よって、炭素ラジカル(C・)の安定性もカルボカチオン(C+)と同様に考えることができ、
炭素ラジカル(C・)の安定性は、第一級、第二級、第三級の順に増す。
他、ベンジルカチオン(Ph−C+)やアリルカチオン(C=C−C+)と同様に、ベンジルラジカル(Ph−C・)やアリルラジカル(C=C−C・)も共鳴により安定化する。

 

 

◆ bについて
b ○ ベンジルアニオンは、メチルアニオンより安定である。

 

電荷の分散と物質の安定性の関係について、正電荷や負電荷が分散される範囲が広いほど安定性が高い。

 

ベンジルアニオン(Ph−O:-)やアリルアニオン(C=C−C:-)は、共鳴によりπ電子が非局在化することで安定性が高まる。

 

炭素原子を含む反応活性種 第94回薬剤師国家試験問5

 

 

◆ cについて
c × カルボアニオンは、隣接炭素原子上に電子求引基が存在すると、より不安定となる。
→ 〇 カルボアニオンは、隣接炭素原子上に電子求引基が存在すると、より安定となる。

 

・負電荷を帯びるカルボアニオン(C−)など電子過剰な化学種は、電子求引性電子効果が与えられると電子過剰が弱められて安定性が高まり、電子供与性電子効果が与えられると電子過剰が強められて安定性が低くなる。

 

・正電荷を帯びるカルボカチオン(C+)など電子不足な化学種は、電子求引性電子効果が与えられると電子不足が強められて安定性が低くなり、電子供与性電子効果が与えられると電子不足が弱められて安定性が高くなる。

 

 

◆ dについて

 

d × ラジカル反応は、ラジカル捕捉剤により促進される。
→ 〇 ラジカル反応は、ラジカル捕捉剤により抑制される。

 

ラジカル反応は連鎖的に続く。
ラジカルと反応した分子から新たなラジカルが生成し、そのラジカルが別の分子と反応して別のラジカルを生成し…、というようにラジカル反応は連鎖して続いていく。ラジカル同士が反応すればラジカル反応は停止するが、ラジカル同士が出会う確率は低い。
ラジカル補足剤は、ラジカルと反応して補足することによりラジカル反応の連鎖を抑制する物質である。

 

 

◆ eについて

 

e ○ クロロホルムを強塩基で処理すると、ジクロロカルベンが生成する。

 

クロロホルム(CHCl3)に強塩基を反応させると、一重項カルベンであるジクロロカルベンが生成する。
一重項カルベンの炭素はsp2混成軌道を取り、オクテット則を満たしておらず空のp軌道を持つので、一重項カルベンは電子を欲しがる求電子剤となる。

 

炭素原子を含む反応活性種 第94回薬剤師国家試験問5

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