「反応」と「反応の分類」の対の正誤 第88回薬剤師国家試験問10

第88回薬剤師国家試験 問10
次の「反応」と「反応の分類」の対の正誤を判定してみよう。

 

「反応」と「反応の分類」の対の正誤 第88回薬剤師国家試験問10

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第88回薬剤師国家試験 問10 解答解説

 

◆ aについて

 

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反応aは酸化反応である。

 

酸化とは、
電子を失うこと、または、
ある原子(通常は炭素)の電子密度が低下することであり、
電気陰性度の低い水素が外れることや
電気陰性度の高い酸素,窒素,ハロゲンが結合することが挙げられる。

 

還元とは、
電子を受け取ること、または、
ある原子(通常は炭素)の電子密度が上昇することであり、
電気陰性度の低い水素が結合することや
電気陰性度の高い酸素,窒素,ハロゲンが外れることが挙げられる。

 

反応aは、アルコールを二クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7)で酸化し、ケトンを生成している。

 

「反応」と「反応の分類」の対の正誤 第88回薬剤師国家試験問10

 

この反応は、上記の赤矢印の炭素において、
電気陰性度の小さい水素が外れ(脱水素)、
炭素の電子密度が低下しているので酸化反応である。

 

 

◆ bについて

 

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反応bは還元反応ではない。
反応bはアルコールの酸性条件下での分子内脱水であり、
HとOHが脱離してアルケンを生成する脱離反応である。

 

アルコールの分子内脱水については、
下記のリンク先の97回問6の解説を参照
97回問6

 

 

◆ cについて

 

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反応cは加溶媒分解反応ではなく、
求核置換反応のSN2反応であり、
ウイリアムソンのエーテル合成と呼ばれる。
ウイリアムソンのエーテル合成の詳細は下記のリンク先を参照
ウイリアムソンのエーテル合成 99回問103

 

アルコールの分子形(R−OH)やフェノールの分子形(Ph−OH)は求核性が低いので、
塩基で脱プロトン化し、
アルコキシドイオン(R−O:-)やフェノキシドイオン(Ph−O:-)に変えて求核性を高める。
アルコールのOHの酸性度は非常に弱いので、NaHのような特に強い塩基が必要である。

 

反応cのウイリアムソンエーテル合成は下記のようにSN2機構で進む。

 

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◆ dについて

 

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反応dはラジカル反応である。
過酸化物は比較的ラジカルになりやすい。
よって、過酸化物存在下でのアルケンに対するハロゲン化水素の付加反応は、通常と異なり、ラジカル反応として進行し、主生成物は逆マルコフニコフ型となる。すなわち、アルケンのC=Cの炭素のうち、置換基の多い方の炭素に水素が結合し、置換基の少ない方の炭素にハロゲンが結合したものが主生成物となる

 

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なお、通常のアルケンに対するハロゲン化水素の付加反応では、カルボカチオン中間体を経るイオン反応として進行し、主生成物はマルコフニコフ型となる。すなわち、アルケンのC=Cの炭素のうち、置換基の少ない方の炭素に水素が結合し、置換基の多い方の炭素にハロゲンが結合したものが主生成物となる

 

「反応」と「反応の分類」の対の正誤 第88回薬剤師国家試験問10

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