求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

第99回薬剤師国家試験 問7
下記の各反応について、求核置換反応であるか否か判定してみよう。

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

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第99回薬剤師国家試験 問7 解答解説

 

◆ 1について

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

反応1は芳香族求核置換反応である。

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

電気陰性度の大きい塩素の結合した炭素は正に分極しており(Cδ+)、その炭素へ求核試薬であるアミドイオン(−:NH2)が求核攻撃して付加する同時にClが外れ、結果として、ClとNH2が置換したものが生成している。

 

一般に、芳香環はπ電子が豊富なため、芳香環の電子豊富な炭素で水素(H)と求電子試薬(E)が置換する求電子置換反応が起こりやすい。
一方、芳香環では求核置換反応は起こりにくい。一般に芳香環は電子豊富なため比較的電子豊富な求核剤(Nu)とは静電的にマイナスなもの同士で反発し合うこと、また、sp2炭素−脱離基の結合は切れにくいこと、これらの要因から芳香環では脱離基と求核剤の置換反応は起こりにくい。
ただし、条件が揃えば、本問の反応1のように芳香環でも求核置換反応は起こり得る。

 

 

◆ 2について

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

反応2はカルボン酸誘導体の求核アシル置換反応である。
カルボン酸・カルボン酸誘導体(R-CO-L)は求核試薬(Nu)と反応して求核アシル置換反応を起こす。

 

★ カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とした求核アシル置換反応

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とする求核アシル置換反応については下記のリンク先を参照
カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の概要

 

★ カルボン酸誘導体を基質とし、アミンを求核剤とする求核アシル置換反応ではアミドが生成(アミノリシス)

 

カルボン酸誘導体(R1-CO-L)に求核試薬として第1級・第2級アミン(NHR2R3)を反応させると、求核アシル置換反応の結果、R1-CO-Lにおいて脱離基(L)がアミン(NR2R3)に置換したアミド(R1-CO-NR2R3)が生成する。これをカルボン酸誘導体のアミノリシスと呼ぶ。
ただし、第3級アミンは立体障害が大きいことからカルボニルとは反応しない。

 

酸ハロゲン化物(R1-CO-X)とアミン(NHR2R3)の反応では、求核アシル置換反応(求核付加−脱離)の結果、アミド(R1-CO-NR2R3)とハロゲン化水素(HX)が生成する。

 

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◆ 3について

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

反応3は、第3級アルコールのSN1反応によるハロゲン化アルキルの生成であり、求核置換反応である。
第3級アルコールやベンジル位やアリル位に−OHのあるアルコールなど、−OHが脱離することにより安定性の高いカルボカチオンを生成するアルコール(ROH)では、ハロゲン化水素(HX)を反応させると、SN1反応によりOHとハロゲン(X)が置換したハロゲン化アルキル(RX)が生成する。
OHはそのまま脱離すると不安定な水酸化物イオン(OH−)となるのでそのままでは脱離しにくいが、ハロゲン化水素がOHをプロトン化して+OH2とすると安定なH2Oとなって脱離しやすくなる。
なお、反応中心炭素が不斉中心の場合、SN1の生成物は互いに鏡像異性体の等量混合物(ラセミ体)となる。
アルコールにハロゲン化水素が反応した場合のSN1反応は下記のように進む。

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

 

なお、第1級・第2級アルコールでは、塩化チオニル(SOCl2)や三ハロゲン化リン(PX3)を求核剤として用いることで、SN2反応により−OHとハロゲン(X)を置換させてハロゲン化アルキルを生成できる。

 

 

◆ 4について

 

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反応4はカルボン酸の求核アシル置換反応である。
カルボン酸(R-CO-OH)のカルボニル炭素に求核試薬(Nu)が反応すると、求核アシル置換反応が起こり、カルボン酸においてOHと求核試薬(Nu)が置換した化合物(R-CO-Nu)が生成する。

 

★ フィッシャーのエステル合成
カルボン酸(R1CO-OH)とアルコール(R2OH)を酸触媒下で加熱すると、求核アシル置換反応により、エステル(R1CO-OR2)と水が生成する。これをフィッシャーのエステル合成と呼ぶ。カルボン酸のカルボニル炭素はそのままだと求核試薬との反応性は高くないが、酸触媒によりカルボニルの酸素がプロトン化されると、カルボニル炭素の正電荷(Cδ+)が強まり、求核試薬との反応性が高まる。そこへアルコールまたはフェノールのヒドロキシ基が求核攻撃し、求核アシル置換反応の結果、エステルが生成する。
この反応は平衡反応であり、出発物のカルボン酸またはアルコールを大過剰にするか、もしくは、生成物のエステルまたは水を順次反応系の外へと取り出して反応系内で過少にすると、平衡は生成物に傾く。

 

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◆ 5について

 

求核置換反応でないのはどれか 99回薬剤師国家試験問7

 

反応5は芳香族化合物の求電子置換反応である。求核置換反応ではない。

 

★ 芳香環はπ電子豊富であり、求電子試薬(E+)と反応し、HとEが置換する求電子置換反応を起こす。

 

芳香族化合物は求電子置換反応の基質となる。その機構は次の通り。
まず、芳香環のπ電子豊富な環炭素の1つに対して求電子試薬(E+)が付加し、中間体としてカルボカチオンを生成する。カルボカチオンとなることで、一旦、環は芳香族性を失いエネルギーが上昇して安定性が低下するが、求電子試薬が付加した炭素からHがプロトンとして放出されることにより、芳香族性を取り戻し、エネルギーが低下して安定な生成物となる。結果として、環炭素の1つにおいてHとEが置換したものが生成する。

 

反応5は芳香族化合物の求電子置換反応によるニトロ化である。
発煙硝酸(濃硝酸の1種)と濃硫酸を反応させると、硝酸が硫酸によりプロトン化され、その後、脱水が起きてニトロニウムイオン(+NO2)を生成する。次いで、電子豊富な芳香環の1つの炭素に対して求電子剤のニトロニウムイオンが付加してカルボカチオン中間体を生成し、次に同じ炭素から水素がプロトンとして外れ、結果、芳香環の炭素の1つにおいてHとNO2が置換したものが生成する(求電子置換反応によるニトロ化)。
なお、芳香族求電子置換反応はスルホン化など一部を除きほとんどが不可逆反応である。遷移状態のエネルギーの高さや中間体の安定性で反応速度が決まり、速度論的に進行する。

 

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