カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の反応機構の概要

本ページでは、カルボン酸・カルボン酸誘導体(酸ハロゲン化物,酸無水物,エステル,アミド)に対して求核試薬が反応して起こる求核アシル置換反応の反応機構の概要を説明しています。

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★ カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とした求核アシル置換反応の基本

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体(R-CO-L)と求核試薬(Nu)との反応として一般に起こりやすいのは求核アシル置換反応であり、結果として、
脱離基(L)がNuに置換したもの(R-CO-Nu)と
脱離基のアニオン(L−)が生成する。
カルボニル構造は失われないことが多い(求核アシル置換反応)。

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体(R-CO-L)の求核アシル置換反応は次のような二段階の付加−脱離反応である。
まず、カルボニル(C=O)の正に分極した炭素(Cδ+)に求核試薬(Nu)が付加し、四面体中間体が生成する。
次に、四面体中間体から脱離基(L)が外れる。結果として、R-CO-Lにおいて脱離基(L)がNuに置換したもの(R-CO-Nu)が生成する。

 

下記はカルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の概観である。

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の反応機構の概要

 

 

一方、アルデヒド・ケトンと求核剤の反応は求核付加反応であり、
カルボニル構造は失われる。
詳細は下記のリンク先を参照下記のリンク先を参照
アルデヒド,ケトンと求核試薬の反応 求核付加反応のまとめ

 

 

★ ヒドリドイオン(H−)またはアルキルアニオン(R−)が求核剤の場合は、2回求核攻撃が起こることに注意

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体に対して求核試薬(Nu)としてヒドリドイオン(H−)やグリニャール試薬等由来のアルキルアニオン(R−)が求核攻撃する場合は、求核アシル置換反応の生成物がアルデヒド(R-CO-H)またはケトン(R1-CO-R2)であり、
これら生成物に対して追加的に求核試薬が付加反応を起こすことに注意が必要である。

 

★ カルボン酸・カルボン酸誘導体に求核試薬としてヒドリドイオン(R−)が求核攻撃する場合

 

カルボン酸またはアミド以外のカルボン酸誘導体(R1-CO-L)にLiAlH4を反応させると、ヒドリドイオン(H−)による求核アシル置換反応の結果、R1-CO-Lにおいて脱離基(L)が水素(H)に置換したアルデヒド(R1-CO-H)が生成する。さらに、生成したアルデヒド(R1-CO-H)に対してヒドリドイオン(H−)が求核付加してアルコキシドイオンが生成し、続いてそれがプロトン化され、最終的に1級アルコール(R1-CH2-OH)を生成する。

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の反応機構の概要

 

 

★ カルボン酸・カルボン酸誘導体に求核試薬としてアルキルアニオン(R−)が求核攻撃する場合

 

グリニャール試薬では、Mgと結合した炭素が負電荷を帯びており(C:−)、カルボアニオン(R:−)として振る舞う。
カルボン酸誘導体(R1-CO-L)にグリニャール試薬(R2MgX)を反応させると、カルボアニオン(R2:−)による求核アシル置換反応の結果、R1-CO-Lにおいて脱離基(L)が炭化水素基(R2)に置換したケトン(R1-CO-R2)が生成する。さらに、生成したケトン(R1-CO-R2)に対してカルボアニオン(R2:−)が求核付加してアルコキシドイオン(R1-C(R2)2-O:-)が生成し、続いてそれがプロトン化され、最終的に元はカルボニルだった炭素に2つの炭化水素基(R2)とヒドロキシ基(−OH)が結合したアルコール(R1-C(R2)2-OH)を生成する。
1分子のカルボン酸誘導体に対して2分子のグリニャール試薬が反応する計算になる。

 

カルボアニオンは塩基性が強く反応性が高いので安定性が低い。生成物のアルコールからカルボン酸誘導体とカルボアニオンに戻る反応は起こりにくい。したがって、グリニャール反応は不可逆反応である。

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の反応機構の概要

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