カルボン酸とアルコールからエステル合成の反応機構 88回薬剤師国家試験問12ab
第88回薬剤師国家試験 問12ab
カルボン酸エステルに関する記述abの正誤を判定してみよう。
a カルボン酸とアルコールからエステルを生成する反応では、酸触媒が必要である。
b 安息香酸を酸触媒の存在下で18Oで標識したメタノールと反応させると、標識された酸素は安息香酸メチルに含まれる。
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第88回薬剤師国家試験 問12ab 解答解説
◆ aについて
a ○ カルボン酸とアルコールからエステルを生成する反応では、酸触媒が必要である。
カルボン酸のカルボニル炭素の正電荷(Cδ+)は、カルボキシ基が共鳴するためアルデヒド・ケトンのカルボニル炭素の正電荷(Cδ+)に比べて相対的に弱く、求核試薬との反応性が低い。酸触媒を用いると、カルボン酸の求核剤との反応性が高まる。
★ フィッシャーのエステル合成
カルボン酸(R1CO-OH)とアルコール(R2OH)を酸触媒下で加熱すると、求核アシル置換反応により、エステル(R1CO-OR2)と水が生成する。これをフィッシャーのエステル合成と呼ぶ。カルボン酸のカルボニル炭素はそのままだと求核試薬との反応性は高くないが、酸触媒によりカルボニルの酸素がプロトン化されると、カルボニル炭素の正電荷(Cδ+)が強まり、求核試薬との反応性が高まる。そこへアルコールまたはフェノールのヒドロキシ基が求核攻撃し、求核アシル置換反応の結果、エステルが生成する。
この反応は平衡反応であり、出発物のカルボン酸またはアルコールを大過剰にするか、もしくは、生成物のエステルまたは水を順次反応系の外へと取り出して反応系内で過少にすると、平衡は生成物に傾く。
◆ bについて
b ○ 安息香酸を酸触媒の存在下で18Oで標識したメタノールと反応させると、標識された酸素は安息香酸メチルに含まれる。